2『なんでも知ってる』 ページ2
数日後。
古典のテストは無事に終わり、今日はその結果返却日だった。
私の結果は、見事満点。
普段であれば “EXCELLENT!” のスタンプもこれとなく嬉しく思えるのに、今日はその文字列に複雑な気分を抱く。
満点のテスト用紙に目を落としていると、隣で「ふなぁ……」と泣き声が聞こえてきて。
「なんでなんだ……あんなに勉強したのにぃ！」
「ったくー、解答欄ズレてなければ合格だったじゃん。ちゃんと最後に見直したか？ 何やってんだよホント〜」
残念なテスト結果に嘆くグリムと、それを横でたしなめる「マブ」のうち、
不合格の印が押されたのはグリムだけではない。私が自負する「マブ」のうち、
「どうしても古文苦手なんだよな……全然わかんなくて」
「デュースは考えすぎなんだよ〜。古文ってどうせ何百年も前の文章なんだし、ある程度意味が読み取れればそれでいいんじゃね？ 隅から隅まで読もうとしないほうがいいって」
またしてもからからと笑ってアドバイスする、片割れの赤い方。
その助言内容が対グリム、デュースのみに限らず、対私のときも的を射ていることが多いのが、彼を侮れない理由の一つ。
「んじゃ、補習がんばれよ。オレと監督生は先行くから」
「くーっ！ すぐに終わらせてやるんだゾ！ そしたらオレ様たちも、メシだ、メシィ〜！」
「そうだなグリム。とっとと終わらせてメシにありつこう！」
教員の指示でデュースとグリムは教室に残された。昼食をおあずけにされる男子高校生たちの、なんと辛いことやら。
空腹の苦しみについては共感してやまない。それに、彼らはとにかく食い意地張ってる。つまり感じる苦痛の程度は少なくとも私の倍以上であろう。特にグリム。
「おーい、監督生？」
補習という名の戦地に赴いた彼らに思いを馳せていれば、隣を歩くマブの
「ここ数日上の空になること多いよね。なんかあった？」
チェリーレッドの瞳は、私の細かな変化を見逃さない。
気遣いができすぎて、頭が回りすぎて、時に彼のことが怖くなる。
エースは私のこと、なんでこんなにわかるんだろう。
返事ができずに、気まずげに目を逸らしていれば、
「とりあえず中庭で事情聴取、な」
そう言って悪戯っぽく笑ったエースが、「早くしないと購買売り切れるぜ〜」と後頭部に両手を添え、前を歩きはじめた。
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作者名：りんこ x他1人 | 作成日時：2023年12月12日 20時
