犯人探し 〜5〜 ページ31
そのまま自宅へ向かう。
歩きながら2人の会話をうかがった。
「誰もいない?」
更衣室のドアを閉める音がした。
「まだ…怒ってる?」
ニコルが弱々しい甘い声を出す。
「怒ると言うか…、何てことをしてくれたんだって…」
キーズが重い口調で答えた。
「これも…全てキーズの為にやってあげたのに…」
「やってあげた?俺はこんな事、一度だって望んで無いぞっ」
「だって…、フロイドにいつか吠え面かかせてやるって言ってたでしょ?」
「それはそう言う意味で言ったんじゃないっ」
「フロイドの肩を持つの?キーズは…俺の事だけを愛してるんでしょ?」
「そうだけど…」
「なら、今回だって、俺を褒めてよ!どうして怒るの?」
「だから、怒ってるんじゃなくて…。お前にがっかりしてる…。俺は自分の実力でいつかアイツを…フロイドを負かしてやりたい意味で言ったんだ。ドーピングで失格にさせる不正をして…それで吠え面かかせたなんて言えないだろっ。それに…、お前のしたことは犯罪だぞ?直接お前が不正に関与していなくても、依頼したのはお前なんだろ?」
「そうだよ?俺は金持ちの一人っ子だから。金ならいくらでも使える。だから、今回の不正だって、金で魔法士を買ったんだ。全てはキーズの為っ!フロイドさえいなくなれば、またキーズがトップ選手になるでしょ?俺はそのキーズをいつまでも見ていたいんだよ…」
「借りにもし、フロイドがいなくなったとしても、他の国にはフロイドに近い実力の選手が育ち始めてる。俺の実力はここまでだったんだよ…」
「諦めるの?」
「諦めは…しない…。俺はパルクールが好きだ。フロイドに負けないくらいパルクールを愛してる」
「キーズなら…喜んでくれると思ったのに…」
「ニコル…。これは間違ったやり方だ。今ならまだ…間に合わないかもしれないが、ちゃんと事務所に説明しろっ」
「嫌だっ!この話を聞いたキーズだって、もう事務所にいられなくなるかもしれないんだよっ!このまま行けば、フロイドは確実にこの世界からいなくなるっ」
「キーズ…。お前はどこかで歯車が狂ってしまったんだな…」
「えっ…。まさか…俺を…捨てるの…?」
「少し…、距離を置こう…」
「キーズっ!」
バタンっ…
ドアが閉まる音がした。
「キーズっ…。何で…俺のこの気持ちを…分かってくれないの…?元はと言えば…フロイドがここに来たのがいけないんだっ。アイツだけは絶対に許さないっ」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月15日 10時