有名人の振る舞い 〜5〜 ページ44
「分かった…。何があっても、これからもオレが守ってやる。だから安心して」
「うん。ありがとう、フロイド君っ」
「警備員さん。車は正面に回してちょうだい」
「はいっ」
フロイドはAの手をしっかり握り直す。
「A。報道陣に何を聞かれても、絶対に答えるな。オレが守るから大丈夫だからっ」
「Aさん。それと、笑顔。忘れないで」
「分かりましたっ…」
Aもフロイドの手をしっかり握った。
「私が道を開ける。その後ろを離れずについて来い」
「おっけー」
「はいっ」
気付けば見送りに来た社員たちが出入り口のロビーに集まっていた。
「みんな、お邪魔しましたぁ〜」
フロイドはAとしっかり手を握ったまま、最後に笑顔で社員たちに手を振った。
「キャ〜っ！フロイドさ〜んっ！」
色々な所から黄色い声が聞こえてくる。
「行くわよっ」
メグがツカツカと早足で出入り口を出る。
遅れない様にフロイドとAもメグのすぐ後ろを付いていく。
一斉にフラッシュが光る。
3人はその光の中に消えて行った。
『リーチ選手と結婚相手のAさんが姿を現しましたっ！』
『リーチさーんっ！何か一言〜っ！』
『Aさーんっ！リーチ選手のどんな所に惹かれたんですかぁー？』
『これ以上話す事ねぇからっ』
『もしかしてAさんのお腹に赤ちゃんいたりしてぇ？』
『いねぇよっ！』
『道、開けてくださいっ！リーチの言う通り、もうこれ以上話す事はありませんっ！通してくださいっ！』
「おやおや…。Aさんも覚悟を決めたようですねぇ」
夕方のニュースのテレビ中継を、オーナー室でアズールが無表情で見ていた。
「僕たちも明日から取材の予約だらけで忙しくなりますよ」
「店も忙しい、取材でも忙しい…。素晴らしい事ではないですか」
アズールがニヤリと笑う。
「フロイドもこれだけ有名人になったのですから、言葉遣い、もう少し何とかならないのでしょうか…」
「フロイドはジェイドとは違います。それに、あの言葉遣いがファンにはたまらないと言うではないですか」
「本人の無自覚による結果的な戦略…。と言うところですね…。ふふふ」
「お前だって、有名人の双子の兄として注目されているんだ。その自覚、もちろんあるんでしょうね？」
「ええ、もちろん。僕の失態でこの店が傾くなんてあってはいけませんから」
「よろしい」
アズールは満足そうな顔をした。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
