有名人の振る舞い 〜1〜 ページ40
「どーせしばらくすればオレの事なんて忘れちゃうヤツらばっかだよ」
フロイドが小さな声でAに囁いた。
「フロイドの言う通りよ、Aさん」
「地獄耳っ…」
「アンタは笑顔っ！」
「うふふ…」
フロイドとマネージャーのメグとのやり取りを見てAは吹き出してしまった。
〜そっか…。フロイド君はいつもメグさんにこうやって人気者の心得を教わってるんだ…〜
「リーチさ〜んっ！」
若い女性社員数人がフロイドに声を掛けた。
「はいはーい」
フロイドは笑顔でその女性たちに手を振る。
「キャ〜ッ！ちょーカッコイイんだけどぉー！」
「ねぇ、今私と目が合ったよっ！」
「嘘っ！良いなぁ〜…」
「アイツらもぉ、オレが優勝したから興味あるだけぇ〜」
「良く分かるね…」
「何となくね〜…。でもあーゆーヤツらのお陰でオレは成り立ってるとこもあるんだよねぇ〜」
「怖い世界…」
「でも最終的にはパルクールの実力が物を言うんだよ…」
「フロイド。良く分かってるじゃない」
「うるせぇ〜、地獄耳メグっ」
「お前がうるさいっ！笑顔で歩けっ」
「A〜…。メグが怖いぃ〜っ」
「よしよし…」
口だけでフロイドを慰める。
今フロイドに触れれば、周りに何を言われるか分からない。
例え結婚発表をしたとは言え、皆が皆、心から祝福している訳では無いことを、Aも分かっている。
物凄く気を遣いながら食堂へ向かう。
こんなに食堂までが長い道のりに感じたのは始めてだった。
食堂に到着すると、他のマネージャーたちが待ち構えていた。
「フロイド。ここから先はアンタのファンだと言う食堂のおばちゃんしかいない。他の人たちは立ち入れない様に配慮した。分かってるな？」
「はいはい…」
「メグさん…？」
「Aさん。あなたは大丈夫。フロイドと一緒に食堂でおばちゃんたちと交流してきなさい」
「分かりました…」
「私はここからアンタの振る舞いを見ているからな」
「A〜…。メグ怖いよぉ〜」
フロイドがAに抱きついて来た。
「フロイド君っ……」
遠くに先程フロイドに声を掛けた女性社員が見えた。
こっちを見ている。
冷たい視線。
「ほらね〜…。さっきのヤツらの冷たい視線。そんなもんだろ？オレはただの時の人…」
「わざと私に抱きついてるの…？」
「抱きつきたかっただけぇ〜…」
メグは何も言わない。
フロイドは更に熱いキスをしてきた。
「んっ……」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
