フロイドの計画 〜4〜 ページ32
『そろそろリーチ選手が姿を現す時間なのですが…、関係者でしょうか…。大きな荷物を持った方たちが出てきましたねー…』
カメラも到着ロビーをアップにしていく。
フロイドが着ていたユニフォームと同じ物を着ている関係者たちが続々と出て来る。
次の瞬間。
一斉にカメラのフラッシュが光った。
『あっ！遂にリーチ選手が姿を現しましたっ！』
〜フロイド君っ〜
Aも思わずテレビに見入ってしまった。
いつものフロイドだ。
機嫌の良い時のいつものフロイドの笑顔だ。
「カッコイイ〜っ！あの笑顔…、ヤバすぎるぅーっ」
食堂のスタッフがうっとりしながらテレビを見つめていた。
到着ロビーは物凄いカメラのフラッシュと、集まったファンの歓声で異様な空気になっていた。
『リーチ選手お帰りなさーい！優勝おめでとうございまーすっ』
リポーターが大袈裟な声でフロイドに声を掛けた。
「ありがとっ」
余程機嫌が良いのか、フロイドがリポーターの声に返事をした。
『えっ？今の…、聞きましたっ？私の声掛けにリーチ選手が応えてくれましたっ！しかも、私と目が合いましたよ！』
リポーターが興奮気味にスタジオに伝える。
「良いなぁ、あのリポーター…。フロイド様に『ありがとっ』って言われてぇ。しかも目が合ったとかズルイよーっ…」
「しょうがないでしょ。アンタもリポーターになれればフロイド・リーチに会えるかもしれないよー？」
「でもさぁ、この後の記者会見で、生の声聞けるんでしょ？チョー楽しみーっ」
「はぁ…。こんな時に仕事なんて…。家でじっくりテレビ観たかったなぁ…」
また食堂のスタッフたちが勝手に盛り上がっている。
「ここにテレビあるんだから、仕事してても何となくは観れるってぇ」
「仕事終わって夕方のニュース観れば、良い所だけ編集してくれたフロイド様が繰り返し流れるハズ！」
〜この空気で…、私がフロイド君と付き合ってるなんて死んでも言えないっ…〜
その直後。
Aの白衣のポケットの中にあるスマホが鳴った。
Aがスマホを取り出す。
メールだった。
〜フロイド君っ〜
──ただいま。
この後記者会見するよ。
観れる？──
Aは急いで返信する。
──お帰りなさい。
お疲れ様。
仕事中だけど、食堂のテレビでなんとか観れると思うよ。──
──分かった。──
──食堂のスタッフたちがフロイド君の話で盛り上がってるの。──
──オレと付き合ってるの知らない人でしょ？──
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
