フロイドの計画 〜2〜 ページ30
数日後。
──義眼のトレーサー、フロイド・リーチ。パルクール世界大会優勝!!
珊瑚の海出身で人魚のフロイド・リーチ選手が、昨日輝石の国で行われたパルクール世界大会で見事優勝を果たした。
本来海で生活をする人魚が陸に上がり、陸の競技であるパルクールで優勝するのは前代未聞の快挙だ。
リーチ選手は島内にある名門校、ナイトレイブンカレッジ在学中、目の病に侵され両目を失った。
しかし双子の兄であるジェイド氏から眼球提供を受け、再び右目が見えるようになった。
専門家曰く、これは奇跡に近い出来事だと言う。
在学中より趣味で続けていたパルクールを偶然街で見かけた現在の監督ハーバー氏にスカウトされ、リーチ選手は本格的にパルクールを始めた。
監督が100年に一人の逸材と豪語していた通り、リーチ選手は短期間でどんどん頭角を現していった。
リーチ選手はパルクールの実力だけでなく、ファッションセンスも買われ、色々な企業とのコラボ商品をプロデュースし、次々とヒットさせている。
また、優秀な魔法士と言うエリートな上、高身長でスマートな容姿に、女性のみならず、男性ファンも増え続けている。
そして、最近急成長を遂げているモストロ・ラウンジの経営者、アズール・アーシェングロット氏とは幼馴染で、リーチ選手とのスポンサー契約が有力視されている。──
「ふふ。フロイド、やりましたね」
「ええ。これで当店も忙しくなる事間違いないです」
モストロ・ラウンジのオーナー室。
新聞を見ていたアズールが顔を上げた。
そして新聞を机に放り投げる。
それをジェイドがチラッと見た。
──記事:エペル・フェルミエ──
「先日のエペルさんとのお食事、随分と盛り上がったのでは？」
「ええ。フロイドの話で持ち切りでしたよ」
「ふふふ。さすがアズールです」
アズールがタブレットを開く。
「見てご覧なさい。予約の枠がどんどん埋まっていくではありませんか」
「ここで更に新店舗をオープンすると言う偶然…」
「ええ。こんな偶然、滅多にありませんよ」
「ふふふ。アズールの強運には頭が下がります」
「さぁ。もうすぐランチのオープン時間ですっ。僕もラウンジのお手伝いでもしましょうかねぇ」
アズールが立ち上がり、部屋のドアへ向かう。
「オーナー自らラウンジに立つとは…。さすがお客様を大切にされているのが伝わってきます」
ジェイドが仰々しく言いながらアズールの後を付いて行った。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
