5年経った2人 〜3〜 ページ26
「おや。それは残念。気が変わったら、いつでも仰ってくださいね。Aさんでしたら、即採用しますので」
分かりきった返事をされながらも、ジェイドは微笑んだ。
「リーチさん。設置完了しましたのでご確認お願いします」
キングサイズのベッドは、あっという間に寝室に鎮座した。
業者も帰り、3人はリビングへ戻った。
「遅くなりましたが、引越祝いです」
ジェイドが大きな紙袋をリビングのテーブルへ置いた。
「ありがとうございます」
「なぁに？」
「高級マンションには高級食器が相応しいでしょう？」
フロイドが紙袋から箱を出した。
「重っ…」
「２人の好みの柄が分からなかったので、僕が勝手に似合いそうな柄を選んでみました。開けてみてください」
フロイドが箱を開ける。
「茶器…」
「うふふ。ジェイド先輩らしいですっ。それに、素敵な柄…。スミレですか？」
「さすがAさんです。僕の可愛い妹にピッタリの柄でしょう？」
「ふーん」
「気分に合わせて、この茶器もぜひ使ってあげてください」
「ありがとうございますっ。凄く可愛い…。使っちゃうのもったいないですね」
「ふふふ。使ってこそ、食器も喜ぶと言うものです。それと、こちらも」
ジェイドが小さな紙袋をまたテーブルに置いた。
「あっ！ジェイド先輩がいつも茶葉を買ってるお店の袋っ」
「ええ。こちらも茶器に合わせて高級な茶葉を用意しました」
「ふーん」
「フロイド君、さっきから『ふーん』しか言ってないじゃんっ！」
「Aさん、大丈夫ですよ。フロイドはこれでも喜んでいるんです」
「そうなの…？」
「うん」
「分かりにくっ…」
「じゃ、この茶器と茶葉で、美味しいお茶、淹れてよ」
「ええ。良いですよ。キッチン、お借りしますね」
「私も手伝いますっ」
「久しぶりにフロイドが休みなのでしょう？せっかくですから２人でキングサイズのベッドの寝心地、確かめてみたらいかがです？」
「えっ」
「お茶が入ったら呼びに行きますから。僕に遠慮なさらず、どうぞ」
「だってぇ。A、寝室行こ」
「あ…、はい…。ジェイド先輩、ありがとうございます…」
「いいえ。ごゆっくり」
既に寝室に向かって歩き出したフロイドにAは急いで付いて行った。
フロイドが寝室のドアを開ける。
「すげぇ存在感だねぇ〜」
「うん…」
「まずはベッドメイキングだねぇ」
フロイドがマジカルペンを出し、無機質なマットレスに向かって一振りした。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
