見える生活 〜1〜 ページ21
「A…。大好きだよ…」
「先に言われちゃいました…。私もフロイド先輩大好きって言いたかったのに」
「順番なんて、どっちだっていーだろ…」
「んんっ……」
フロイドが熱いキスをする。
Aもそれに応える。
「……最高…ですっ…」
「だろ？もっと最高にしてやるよ…。でも、声出すの禁止ね〜」
「頑張って…堪えますっ……」
「うん。良い子だねぇ〜。じゃ、今から最高のご褒美あげるからねぇ〜」
「んぁぁっ……」
2人にとって、最高の熱い夜を過ごした。
フロイドはふと目が覚めた。
「………」
横を向くとAがすやすやと眠っている。
「見えてる…。Aの寝顔…、オレの目で…見えてる…」
小さく呟きAの頬を触る。
「A…」
半年間、手で触れて見ることしか出来なかったAの顔を、じっと見つめる。
窓の外は少し明るい。
部屋の時計を見る。
〜全然見えねぇ…〜
時計の位置は分かる。
しかし、針どころか時計のはっきりした形すら認識出来ないレベルだ。
枕元のスマホを探し、時間を確認する。
「5時かよ…」
今日も休日だ。
フロイドは眠っているAを抱きしめ、勝手にいい匂いタイムを始めた。
「ん……」
「まだ寝てていーよ」
「ん…？おはよう…？」
「うん。おはよ。寝てなよ…」
「……はい…」
寝起き過ぎて力の出ない腕で、Aはフロイドを抱きしめた。
しかしすぐにベッドへダラリと落ちてしまった。
「寝てろっつってんのに…」
ベッドの上に落ちた仰向けの手のひらを、フロイドが指を絡ませて握った。
ほんの少しだけAの指が動く。
目を閉じてみる。
赤い糸が繋がっている。
目が見えるようになったのに、目を閉じると赤い糸が見える。
赤い糸が結ばれているAの左手の小指にそっとキスをする。
フロイドは幸せ過ぎて胸がいっぱいになった。
Aはコーヒーの香りで目を覚ました。
「フロイド先輩…？」
「おはよー」
フロイドがコーヒーを淹れていた。
「カフェオレ作るね〜」
「ありがとう…」
Aはベッドの中からフロイドがカフェオレを作っていく姿を眺めていた。
この半年間見てきた動作とはまるで違う。
その動きは代償を払う前のフロイドに戻っていた。
「寮に戻ったらぁ、Aにカフェオレ作ってあげたかったんだよね〜」
「うふふ。嬉しい…」
「もうすぐ出来るからそろそろ起きてていーよ〜」
「はい」
Aは起き上がり、ベッドから降りた。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
