新しい目 〜9〜 ページ18
「Aさん。以前と同じ、フロイドたちは今から病院を出て、学園長のところに挨拶をしてからこちらに戻って来るそうです」
「前回とは違って…、嬉しさだけですねっ」
「ええ。そうですね。フロイドが帰って来たら、見えるようになった新しい目で、その素敵な服を見てもらいましょうね」
「はいっ。……早く帰ってきて欲しいな…」
「2人が帰ってくるまで、座って待っていてください。僕は少々、寮長の仕事がありますので、あちらの机で作業していますから」
「分かりました」
それから１時間近くが経った。
「遅いですねぇ…」
「はい…。何かあったのかな…」
「何かあればジェイドから連絡が来るはずです」
バンッ！
思い切り乱暴に部屋のドアが開けられた。
アズールもAもその音に驚きドアを見る。
「フロイド先輩っ！」
フロイドがノックもせず突然乱暴にドアを開けたのだ。
「フロイドっ。ノックくらいしなさいっ」
フロイドは何も言わずにAめがけて歩いてくる。
Aと右目を合わせたまま。
「Aっ……」
そしてAを思い切り抱きしめた。
「お帰りなさいっ…」
「うん。ただいま。オレ、一人でここまで来たよ…。Aの事も、ちゃんと見える。オレの好きな青い服、着てくれたんだね…」
「はいっ……」
「半年ぶり…。顔、良く見せて…」
アズールを完全に無視して２人の世界が始まった。
フロイドがAの顔を上に向ける。
「フロイド先輩のメガネ姿…、カッコいいです…」
「うん…」
フロイドが右目でAを見つめながら頬を触る。
「あれ…？」
Aがフロイドの右目を覗き込む。
「フロイド先輩…。右目……」
Aがハッとした。
「うん…」
「えっ？まさかっ……。嘘でしょっ…」
「ただいま戻りました。遅くなってすみません」
部屋の入口からジェイドの声がした。
「ずいぶん遅かったですね。学園長と…。ジェイド…？」
アズールが眉根を寄せてジェイドを見た。
「ええ。少し学園長と話し込んでしまったので」
「ジェイドっ…。お前…その右目の眼帯…」
「ふふふ。……バレました？」
アズールとAが固まった。
ジェイドは２人を気にもせずに荷物を棚に置き、部屋の中へ入ってくる。
「お茶、淹れますね。アズール、キッチン借りますよ」
「聞いていませんよっ」
「……言えば、反対するでしょう？」
ジェイドはキッチンに向かいながら返事をした。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
