新しい目 〜7〜 ページ16
「だからって…、何でジェイドの目なんか…」
「以前から、ジェイドさんはドナーが間に合わなければフロイドさんへ眼球を提供する意思を示されていました。事前に検査も受け、移植しても問題ないことも確認してあります。ジェイドさんはそこまでしてフロイドさんに再びこの世界が見えるようになって欲しいと強く思っていたのですよ」
「……オレの目が見えないからって…、またコソコソ…そんな事、しやがって…」
フロイドは鏡を足の方へ軽く放り投げた。
そしてうなだれた。
「これで…、オレと相性合わなかったら…どうするつもりだったんだよ…。ジェイドの目がムダになるところだったんだよ…？」
「それはそれで受け入れるしかありません。ですが、僕たちは双子です。相性が悪いなんて、あり得ないでしょう？」
「まぁ、医学的には賭けでもありました。しかし、兄弟の方が、成功率が高いのは確かです」
「返す…」
「僕の目を？」
「これじゃ、ジェイドが不便な生活になるだろ…。不便な生活は…、オレ一人で充分だよ…」
「片目が見えていれば不便な事なんてほとんどないでしょう？Aさんはどうするつもりなのです？守りたいのではなかったのですか？」
「リーチさん。もう、返すことは出来ません。そんな事…しても、ジェイドさんが再び右目が見えることもないでしょう」
「……ふざけんなよ…」
「Aさんの為に、フロイドは目を犠牲にしたのです。それが原因で、Aさんを守れなかったら意味がないでしょう？Aさんを守れるのは、フロイドしかいないのですから。フロイドだって、目の見えない生活に耐えられず、移植手術を受け入れたのですから、この現実を素直に受け入れて欲しいですよ」
「恐らく、ジェイドさんの眼球提供が無ければ、フロイドさんは本当に一生…この世界を見ることは出来なかったでしょう…」
「何の為のドナー登録なんだよ…」
「本来、眼球移植は、ドナーが現れたら患者さんの眼球を摘出します。要は、眼球を取り替える、と言う感じです。ですが、フロイドさんは眼球が無い状態からのスタートだった。そこからして、本来の移植とは違っていたのです」
「本当に、ラッキーだったんですよ。手術、成功したのですから」
「アンラッキーだろ…」
「では、あのまま目が見えない生活を一生続けるつもりだったのですか？」
「そうじゃねぇよっ。ジェイドの目を貰うくらいなら…」
「それではAさんを守れないと言ったでしょう？」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
