新しい目 〜6〜 ページ15
「ジェイド〜。もっとこっちに来てよ〜。そしたらジェイドの顔、見えるかもしれないよ〜」
「そうですね…」
「では、すぐに鏡をお持ちしますね」
医師は病室を出て行き、ジェイドが病室へ入る。
「見え具合、良くなったのですか？」
「ううん。変わんなーい」
ジェイドはゆっくりフロイドの元へ歩いて行く。
「僕の顔、見えますか？」
「うーん…。形は分かるけどぉ…、……ん？」
フロイドが首をかしげた。
「どうしました？」
「あのさぁ…」
「リーチさん。鏡、お持ちしましたよ」
医師がすぐに戻って来た。
「サンキュー、先生〜」
フロイドが医師から手鏡を受け取る。
「なんか緊張するね〜。どんな目なんだろう…」
「鏡でご自分の目を見る距離なら、きちんと見えると思いますよ」
「うん」
フロイドが手鏡を持って自分の目を見た。
ピントを合わせるように鏡を少し前後させる。
「えっ……」
フロイドが目元を触った。
「嘘だろ…」
フロイドの顔がみるみる強張っていく。
「良く見えましたか？」
医師がフロイドに確認する。
「ジェイドっ！もっとこっち来いっ！」
「……これで、良いですか？」
ジェイドがフロイドのベッドの前まで来た。
フロイドはぼやけた視界の中、ジェイドの服を掴み、無理やり自分の目の前に顔を近付けさせた。
「……やっぱり…」
フロイドがジェイドの右目辺りを触った。
ジェイドの右目には眼帯がしてあった。
「………」
ジェイドは黙っている。
「何でっ…こんな事したんだよっ！」
「これしか方法が無かったのです」
「ふざけんなっ！ドナー登録だってしただろっ！」
「リーチさんっ、落ち着いてくださいっ！」
「はぁっ？先生もグルだったって事だよなぁ？」
「フロイドっ。先生は関係ありません。先生は僕のお願いを聞き入れてくれただけです。先生を責めるのはお門違いですよっ」
「誰がジェイドの目が欲しいって頼んだっ？オレはそんな事…、全然望んでねぇんだよっ！」
「目が見えるようになったのだから良いではないですか。とても喜ばしい事でしょう？」
「本気で言ってんのか？オレが…、ジェイドの右目をもらって…、心から喜べると…思ってんのかよっ！」
「リーチさん。あなたは移植手術が出来る可能性、ギリギリの状態だったのです。ドナー登録をしても、順番が回ってくるのは早くても一年以上先です。その頃にはフロイドさんの移植手術は不可能になっていたのです」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
