見えない生活 〜10〜 ページ10
１時間程してジェイドが戻って来た。
手には二人分のサンドイッチを持っていた。
「ここで軽くお昼食べてしまいましょう」
「はい。ありがとうございます」
２人で静かにサンドイッチを食べる。
お昼も食べ終え、Aはまたフロイドの前に座った。
「Aさん。僕は少し席を外しますね。何かあったら看護師さんに報告してください。看護師さんが僕に連絡をしてくれますから」
「分かりました」
ジェイドは気を遣って病室から出て行った。
それから2時間が経った。
「ん…」
フロイドが小さな声を出し、少しだけ身体が動いた。
「フロイド先輩っ…」
「……A…？」
「はい」
「今…、何時…」
「夕方の4時過ぎです」
「そ…。目も開けらんねぇし、真っ暗なんだよねぇ〜…」
フロイドは落ち着いていた。
「そうですよね…」
「ジェイドは？」
「どこかには…いると思います」
「何だそれ…」
「呼びましょうか？」
「ううん。Aと２人でいたい…」
「良かった…」
「さっき…、ごめんね」
「私こそ、黙っててすみませんでした…。まだ、頭痛いですか？」
「うん。でも、大丈夫…。今はAと一緒だから」
「はい…」
「A。いい匂いタイムさせてよ」
「ここで？」
「うん。別にいーじゃん。オレ、3日寝てたんだろ？3日ぶりのいい匂いタイムしたいのぉ〜」
「分かりました」
Aは立ち上がり、仰向けに寝ているフロイドをそっと上から抱きしめた。
すると、フロイドがAを優しく抱きしめてくれた。
「いい匂い…」
「いっぱい嗅いでくださいね…」
「うん」
フロイドが更にAの頭をポンポンと優しく撫で始めた。
「真っ黒でさらさらの髪…」
「はい…」
「いつもと一緒」
「はい…」
フロイドの手が耳に触れる。
指で形を確認している。
「Aの耳…」
「はい…」
そのまま頬を触る。
優しく目も触る。
指でAの顔を確認しているようだ。
「Aの目…、まつ毛、長いね…」
「はい…」
「ほっぺたも柔らかい」
「はい…」
「……唇…」
フロイドは親指でAの唇をなぞった。
「キス…しよ…」
フロイドがAの頭を自分の方へ寄せて行く。
「あれ…。顎にキスしちゃった？」
「はい…。ここですよ…」
Aがフロイドにキスをする。
フロイドはそのままAが離れないように押さえる。
そして何度もキスを繰り返した。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月2日 17時
