見えない生活 〜8〜 ページ8
「フロイドっ」
Aも思わず声を出しそうになった。
ジェイドはすぐにフロイドを抱き上げる。
「触んなっ!ジェイドがAを見ないなら、オレが帰るっ」
「そんな状態で帰って何が出来ると言うのです?貧血でフラフラだし、目だって見えないのに」
ジェイドの言葉にフロイドがキレた。
フロイドは手探りで左腕に付けられた点滴を探し、乱暴に引き抜いた。
「フロイドっ!」
「どけっ!オレは帰るっ。病院に連れて行ってくれなんてオレは頼んでないんだよっ」
点滴を外したことで、エラー音が鳴り始めた。
「そうですか。なら、このまま帰ったらどうです?」
「言われなくてもそうするよっ」
フロイドがまたゆっくりと立ち上がる。
ジェイドは何もせず、黙ってフロイドの行動を見ていた。
フラフラしながらフロイドが一歩ずつ踏み出して行く。
両手で周りの物を確認し、進む。
しかしそこは壁しか無い。
「ドア、どこだよっ」
「一人で帰るのでしょう?」
「チッ…」
「リーチさんっ!点滴、抜いちゃダメじゃないですかっ」
そのタイミングでエラー音を聞きつけた看護師が病室へ入って来た。
「ベッドへ戻りましょう。点滴、また付けますから」
「触んなっ!」
看護師がフロイドを支えようとした時、フロイドは看護師の手を振り払った。
「リーチさんっ。あなたはまだ歩ける状態ではありません。先生から安静にするよう指示がでているんですよ」
「そんなの知るかよっ」
「妹さんだってお見舞いに来てくれているのに、可哀想じゃないですか」
「妹…?」
看護師がAの存在をバラしてしまった。
ジェイドはため息をつく。
「ジェイドっ。どーゆーことだよ。A連れてきたのかっ?」
「ええ。今朝、クッキーを焼いて、フロイドに届けに来たんですよ…」
「A?いるのか?」
「……はい…。黙ってて…、すみません…」
「帰れっ!ここはAの来るところじゃねぇーだろっ!」
フロイドが大声で怒鳴った。
「でも、私はフロイド先輩に会いたかったんですっ」
「こんな姿見て、笑いに来たんだろっ?こんなフラフラで、部屋のドアすら分かんないオレを、笑いに来たんだろっ!」
「そんな訳ないじゃないですかっ!」
「Aさん。真に受けないで。いつものフロイドでは無いと言ったでしょう?」
「オレはいつもと変わんねぇよっ。とにかく、A、ジェイドととっとと帰れっ!」
「帰りませんっ」
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時