見えない生活 〜6〜 ページ6
「……分かりました。では、クッキーを持ってフロイドの所へ行きましょう」
「ありがとうございます…」
自分から申し出ておきながら、Aは内心ドキドキしていた。
〜フロイド先輩が暴れるって……〜
Aはタッパーを取り出し、クッキーをたくさん詰めた。
〜食べてくれると良いな…〜
その間にジェイドがアズールへ連絡を入れる。
２人で急いで準備をし、鏡の間へ向かった。
「Aさん。行きますよ」
「はいっ」
ジェイドとAは、闇の鏡の中へ足を踏み入れた。
暗闇の中から突然柔らかい光に包まれた。
眩しくて目を細めながら進んでいく。
「到着です」
「いきなり…病院なんですね…」
「ええ」
ジェイドが急ぎ足で病院の中へ入る。
Aも小走りで付いて行く。
「一応、ナースステーションに声を掛けていきますね」
「はい」
ジェイドがナースステーションで足を止めた。
「こんにちは」
「リーチさんっ。今日はお二人で面会？」
「ええ。僕の可愛い妹です」
「妹さんですか？」
看護師が驚いた目でAを見た。
「お世話になります…」
「こちらこそ、遠い所、ご苦労さまです。今弟さんは薬が効き始めてウトウトしているところです」
「そうですか。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「いいえ。こんな事になれば、誰だって取り乱しますから」
「お気遣いありがとうございます」
「早くお会いしてあげてくださいね」
「ええ。では失礼します」
看護師に変な紹介のされ方をしたまま、Aはジェイドの後を付いていく。
「あの…、私、妹…」
「その方が何かと都合が良いでしょう？」
「そうなんですか？」
「そんなに気にすることではありません。Aさん。フロイドには、あなたが来ていることを伏せておきましょう。僕が良いと言うまで声を出してはいけませんよ」
「分かりました…」
〜本当に…目が見えなくなっちゃったんだ…〜
また鼻がツンと痛くなった。
フロイドの病室は一番奥の個室だった。
「カリムさんの学友と言うことで、病室も格上のようですよ。フロイドには見えていないので関係ありませんがね」
「カリム先輩って…」
「僕も大富豪の家庭に産まれたかったですねぇ。ふふふ」
そんな事、本当に思っている訳ではない。
そんな口ぶりだった。
病室の前に着いた。
何の躊躇いもなくジェイドがドアをノックする。
「フロイド」
特に返事は無い。
ジェイドはそのままドアを開けた。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月2日 17時
