切なすぎる夜 〜4〜 ページ49
「だってさぁー。ただ事じゃないの、すぐに分かったよぉー…」
「クリス。本当にありがとうございます」
「クリスがジェイドたちを連れてきたの?」
「そーだよー」
「そっか…。ありがと…。オレ…、何やってんだろ…」
「まぁ、今回は未遂で済みましたし、恐らくレオナさんもそれなりの処分を下すでしょう」
「Aのメンタルが心配なんだよ…。これじゃ、Aがこの世界に来た時と同じ…、いや、それ以上の恐怖を感じただろ…」
「確かに、そうでしょうね…」
フロイドが赤い糸を辿る。
「Aは自分の部屋?」
「ええ。2人がいた場所も、そこです」
「………本当に、もう、オンボロ寮では生活出来ねぇな…。そんな部屋で、寝たくないだろ?」
「ええ…」
「Aのところ、行ってくる…」
「立てますか?」
「大丈夫だよ。オレが出来る限りのことは…、してやりたいんだ」
「そうですか」
フロイドはゆっくり立ち上がり、手探りで談話室のドアを見つけ、出て行った。
「A…」
Aの部屋のドアは開いたままだった。
「フロイド先輩……」
「怖かったね…」
ベッドに座っていたAが走って来てフロイドに抱きついた。
「フロイド先輩っ…」
「ごめんね…。また…守れなかった…」
フロイドがAをしっかりと抱きしめる。
「私たち…、何で…こんな事…されなくちゃいけないの…」
「全部…オレのせいだよ…」
「クリスが、来てくれました…」
「そっか…。会ったんだ…」
「クリスが、助けてくれたの…」
「うん…。聞いたよ…」
「フロイド先輩が…呼んでくれたんでしょ?」
「うん」
「フロイド先輩の目を…してた…」
「そーだね…。契約だからね…」
「フロイド先輩が目を失ったから…、こんな事になったのに、その目を持ったクリスに助けられるなんて…、皮肉ですよね…」
「……皮肉…。そーだね…。皮肉だよね…」
「でも…、フロイド先輩もクリスも私も…悪くないんです…。悪いのは、さっき襲ってきた人たち…」
「うん」
「もう…ダメかと思いました…。服、脱がされそうになって…」
「身体…、触られなかった?」
「服の上から……胸を…」
フロイドの抱きしめる力がギュッと強くなった。
「ごめんね…。本当に…、ごめんねしか…言えない…。情けないよ…。こんなオレ…」
「こんなフロイド先輩も、私は好きです…。大好きです…」
切なすぎる夜だった。
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時