不完全な生活 〜4〜 ページ45
「フロイドが倒れた時にミトンがコンロの側に飛ばされて燃えてしまったんです。それをAさんが気付いて水を掛けて消してくれたんですよ」
「そうなの…?」
「はい…。でも、その時にフロイド先輩の足まで濡れちゃいました…。すみません…」
「そんな事…あったの…」
フロイドはショックを受けた。
「片付けは、ジェイド先輩がしてくれましたよ」
「……そっか…。ありがと…」
「やはり目が見えないのに、元の生活と同じようにするなんて、無理なんですよ。少しは周りの協力を素直に受け入れるようになったとは言え、やはり強がるではないですか」
「………」
フロイドは何も言えなかった。
Aを更に強く抱きしめた。
ジェイドがその姿を冷たい目で見下ろす。
「目が見えないのにAさんを守る?本当に出来ると思っているのですか?」
「………」
「ジェイド先輩…、私は充分フロイド先輩に守ってもらえてますよ」
「そうでしょうか?今日みたいな事があっても、守ってもらえたと言えますか?」
「それは…、こういう時だって…、ありますよ…」
「何かあってからでは遅いのです。フロイド。出来ない事はもっと周りの人たちを頼りなさい」
「頼ってるよ…」
「なら、今夜は僕がここに泊まることも、もちろん受け入れますよね?」
「……うん…」
「オクタヴィネル寮に空き部屋があれば、こんな面倒な事をしなくて済むのですが…。仕方ありません」
ジェイドは部屋を出て行った。
「A…。ごめんね…。悔しいけど…、ジェイドの言う通りだよ…」
「謝らないで…。フロイド先輩は一生懸命やってくれてるじゃないですか」
「でも、今日、Aを守れなかったのは…本当だよ…」
「そんな事…、言わないでください…」
Aはフロイドの肩に顔を埋めた。
「……ごめんね…。……はぁ…。悔しいなぁ…」
フロイドから本音がこぼれた。
そしてAの頭を撫で続けた。
「今日は、フロイド先輩ここでゆっくり寝てください。また元気になったら私と一緒に寝てくれますか?」
「……うん…。分かった…。でも、まだここにいてよ…」
「はい。もちろん…」
「夜飯は?」
「私がカレーを作りますから」
「ありがと…」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時