不完全な生活 〜3〜 ページ44
夜。
フロイドが目を覚ました。
「フロイド先輩っ」
「A…。オレ…、また頭痛で…」
「はい。キッチンで倒れたんですよ。ジェイド先輩が助けに来てくれました」
「そっか…」
「頭痛は？」
「うん…。まだちょっと残ってるけど大丈夫…」
「そうですか…。倒れた時に打って痛い所はないですか？」
「ないよ…」
「良かった…。でも、頭痛が心配です…。きっとめまいも残ってるでしょ？」
「どーだろーね…。……カフェオレ、作ってあげられなくて…ごめんね…。オレ…、情けないなぁ…」
いつになくフロイドは元気が無かった。
「カフェオレはいつだって良いんですよ。それよりも、フロイド先輩が元気になってくれないと…」
「うん…。A。ギューさせて…」
「はい…」
Aはフロイドのベッドに乗り、フロイドを抱きしめた。
フロイドもいつもより弱い力でAを抱きしめた。
「いい匂い…。これで、元気になれるから…」
「たくさん嗅いでくださいね…」
「うん…」
フロイドはAを離さなかった。
そのまま長い時間が過ぎていく。
コンコンコン…
「Aさん…」
「あっ、はいっ…」
ジェイドがドアをノックした。
Aがフロイドから離れて起き上がろうとすると、フロイドが引き止めた。
「このまま…」
「でも…」
「別にいーよ…」
カチャ…
ドアが開き、ジェイドが部屋に入って来た。
「……タイミングが悪い時にお邪魔してしまいましたね…」
「すっ……すみません…」
「フロイド。目が覚めたのですね。具合はどうですか？」
それでもジェイドはズカズカとベッドの前までやって来た。
「ちょっと頭痛残ってる…」
「そうですか。めまいも恐らくあるでしょうね。今日はこのまま寝ていてください。僕も今夜はこちらに泊まりますのでAさんは心配ありません」
「いーよ。オレがいれば大丈夫だろ…」
「いいえ。また強がるのですか？頭痛で倒れて薬で眠らされて、キッチンからここまで運んだのは僕ですよ？しかも、Aさんが僕に連絡をしてくれたから良かったものの…」
「毎日じゃねぇーじゃん…」
「ありがとうの1つも言えないのですか？」
「助けてくれなんて頼んでねぇだろっ」
「はぁ…。ああ言えばこう言う…。情けない…」
「フロイド先輩…」
「Aさんがキッチンにいなければ、危なく火事になるところだったんですよ？」
「火事？」
「そんな…、大袈裟ですよ…」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月2日 17時
