不完全な生活 〜2〜 ページ43
「大丈夫。薬、効いてきますからねっ…」
フロイドがいる前でも構わず、Aはジェイドに電話した。
ジェイドはすぐに電話に出てくれた。
「Aさん。どうしました?」
「ジェイド先輩っ!フロイド先輩が…、キッチンで倒れちゃいましたっ。薬は飲ませたけど、床に寝かせた状態で…」
「分かりました。すぐに向かいます。Aさんはそのままフロイドの側にいてください」
電話を切り、フロイドを触る。
「フロイド先輩…。ごめんね…、水掛けちゃった…」
そしてビショビショの焼け焦げたミトンを見つめた。
間もなくしてジェイドがやって来た。
「Aさんっ。お待たせしました。フロイドは?」
「眠っちゃいました…」
フロイドの頭の下にタオルが置いてある。
Aが枕代わりに置いたのだ。
「そうですか。……何か焦げ臭いですね…」
「はい…。お湯を沸かしている時にフロイド先輩が倒れちゃって、その勢いでミトンに火が燃え移ってしまったみたいで…。大事にはならなかったけど、私が焦って水を掛けたから、フロイド先輩の足も濡れちゃいました…」
ジェイドが立ち上がり、コンロ付近を確認する。
「なるほど…。フロイドがお湯を沸かしていたのですね?」
「はい…」
「分かりました。Aさんに怪我はありませんでしたか?」
「大丈夫です。それよりも、フロイド先輩が…」
「そうですね。どこも打っていなければ良いのですが…」
ジェイドがフロイドを抱きかかえた。
「よっ……」
そのままフロイドを背負う。
「とにかく…ベッドへ…」
「はい」
ジェイドはフロイドを背負いながら階段を登り、フロイドの部屋に入った。
ゆっくりとフロイドをベッドに仰向けに寝かせる。
マジカルペンを取り出し、フロイドに向けて振った。
「特別ですよ…」
フロイドはジェイドの魔法で部屋着姿になった。
「ありがとうございます」
「頭痛が襲ったのは2週間ぶりですよね?」
「はい…」
「うーん…。頻度が減ったと考えて良いのでしょうか…。それでも痛みの強さは変わらない…」
「可哀想ですね…」
「これはフロイドも予想出来なかった事でしょうしね」
「そうですね…」
「Aさん。僕はキッチンを片付けてきます。しばらくフロイドの側にいてください」
「はい。お願いします」
ジェイドは部屋を出て行った。
「はぁ……。私は…、フロイド先輩の役に立ってますか…?」
Aは眠っているフロイドを見ながら呟いた。
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時