不完全な生活 〜1〜 ページ42
周りの人たちからの協力に対しても、フロイドは強がること無く素直に受け入れるようになっていった。
そんなある日。
学園から寮に帰って来たフロイドとAは、キッチンでティータイムの準備をしていた。
「カフェオレ淹れるの、だいぶ早くなったでしょ?」
「はい。目が見えないとは思えないくらいですよ。他のこともそうですけど」
「今日もオレがカフェオレ作るね〜」
「はい。お願いしますっ」
フロイドがやかんに水を入れ、コンロに置き、火を点ける。
「夜飯もオレが作るよ」
「何を作ってくれるんですか?」
「そーだね〜…。手始めにぃ、カレーは?」
「色々なスパイスが入ってるカレー?」
「うん」
「食べたいっ!」
「うん。じゃ、決まりね〜」
「楽しみですっ」
そう言いながらAが棚からマグカップを取る。
「たまには違う柄のマグカップ……」
ドンッ
「えっ?」
嫌な音がした。
Aがすぐに振り返る。
「フロイド先輩っ!」
こんなタイミングでフロイドが倒れてしまった。
Aは急いでフロイドに駆け寄った。
「フロイド先輩っ!フロイド先輩っ!」
「うっ……ううっ……」
「頭痛いんですねっ?薬飲みますよっ」
〜どうしよう…。ここにフロイド先輩寝かせておくわけにいかないし、早くジェイド先輩に連絡しなきゃっ〜
Aは乱暴にグラスに水を入れ、薬を出す。
「薬、入れますよ」
フロイドの口を少し開けて口を押し込む。
Aの精一杯の力を入れて、フロイドを少しだけ起き上がらせる。
「くっ……」
〜もっと上がれっ!〜
何とか水を飲ませられる体勢にし、フロイドに水を飲ませる。
ジェイドが以前やっていたように、フロイドの口を開けて薬を飲み込んだか確認する。
〜スマホ…、カバンの中だっ〜
Aはフロイドをそのまま床に寝かせ、急いで談話室に置いてあるカバンの中のスマホを取りに行く。
「えっ?何?臭いっ…」
スマホを握りしめ、再びキッチンに戻る。
「あっ!」
コンロの側に置いてあったミトンが、フロイドが倒れる時に飛ばされ、運悪くコンロの火が燃え移ってしまったのだ。
Aは急いで近くにあったボウルに水を入れて勢い良くミトンに掛けた。
ジュッ……
大きな火では無かった為、水を掛けて火は消えた。
しかしフロイドの足元にも水がかかってしまった。
火元も消し、これ以上燃えることがない事を確認してフロイドに駆け寄る。
「フロイド先輩っ」
「ううっ……」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時