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見えない生活 〜5〜 ページ5

「はいっ」

「オーブンの温度は…170℃くらいでしょうか?」

「はい。フロイド先輩も同じ事言ってました。料理出来る人って、温度まで簡単に予測しちゃうんですね」

「ふふふ。たまたまですよ」



それからクッキーを3回に分けて焼いていった。

「大量…過ぎましたか?」

「いいえ。僕とフロイドで食べ切れる量です」

「うふふ。2人とも良く食べますもんね」

「ええ。いっぱい食べていたら、いつの間にか2人ともこんなに大きく育ってしまいました」

ジェイドとの会話が止まらない。
ジェイドもAを楽しませてくれている。

「Aさん。電話が。少し席を外しますね」

会話の途中でジェイドの電話が鳴った。

〜病院からかな…〜

Aは少しソワソワしてジェイドが戻って来るのを待った。

その間、クッキーの形を眺めていた。
目を閉じ、適当に1つクッキーを取ってみる。
そして指先で形を辿り、何の形か考える。

〜ハートだ〜

目を開けて確認する。

〜正解。これは簡単だったな…〜

もう1回試す。

〜動物なのは分かるけど…、何だろう。…犬?〜

目を開ける。

「嘘…。リスじゃん…」

〜当たり前の様に目で認識してるけど、見えないって、難しいんだ…〜

残念だったのでそのままリスのクッキーを食べた。

「美味しい…」

「Aさん、お待たせしました。病院からで、フロイドが目を覚ました」

「本当ですかっ!」

「ええ。ただ、まだ痛みが相当あるようで、目覚めて早々、暴れていたと…」

「……そんな…」

「鎮痛剤と鎮静剤を投与して、少しは落ち着き始めたようですが、しばらくこの繰り返しが続くかもしれないそうです」

「……そうですか…」

楽しかった気持ちが一気に落ちた。

「病院にも勝手に連れて行った訳ですし、フロイドも分かっていたでしょうけど、気が立っているのは間違いないですね」

「ジェイド先輩、行くんですか?」

「ええ。フロイドを放置して病院に迷惑をかける訳にはいきませんから」

「私は…」

「Aさんはここで待っていてください」

「私が面会出来ない訳ではないんですよね?」

「ええ。僕が一緒なら…」

「だったら、私も連れて行ってくださいっ」

「いつものフロイドとは違うのですよ?Aさんが今まで見たことないフロイドを見て、耐えられますか?」

「フロイド先輩には変わりありません。どんなフロイド先輩でも、私は知っておきたいんですっ」

ジェイドはAの言葉を聞き、考えた。

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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時

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