難しい生活 〜5〜 ページ32
「私は…、フロイド先輩が何でも一人で出来るようになるのを、一緒に手伝いたいです」
「……そうですか。ですが、激しい頭痛が襲って来たら、Aさん一人では対処しきれないでしょう?めまいで倒れることもまだあるというのに」
「そうならないためにも、薬の管理は私がしっかりやりますっ」
「そこでAさんにお渡ししておきたい物がありまして」
ジェイドが持っていた袋から箱を出した。
「これって…」
「ええ。スマホです」
「スマホ…」
「僕とアズールの連絡先しか登録していません。緊急の時はこのスマホを使って僕たちに連絡を」
「フロイド先輩には…」
「言わなくて結構」
「はい…」
「使い方は分かりますね?」
「たぶん…。でも、気付かれますよね…」
「それはそれで構いません。ですが、あえて言う必要もありません」
「分かりました…」
Aはスマホを開き、連絡先を確認した。
「一度ジェイド先輩に電話して良いですか?」
「ええ」
Aは操作をしてジェイドに電話をかけた。
「着信、来ましたね」
「良かった…。これなら安心です」
「メールも出来ますから、そちらも使って構いませんよ」
「はい」
「それにしても、たかが薬を部屋に取りに行くだけだと言うのに、こんなに時間がかかるのですか…」
ジェイドがため息をついた。
「まだ練習中ですからね…。フロイド先輩、本当に頑張ってるんです…」
「明日からの授業も、移動にかなり時間がかかってしまいますね。……分かりました。考えておきましょう」
「はい…」
ジェイドは容赦なかった。
「さすがに遅くないですか?」
ジェイドにお茶を出しながらAは廊下を見た。
「…まさか…」
ジェイドが立ち上がって早足でキッチンを出て行った。
Aも急いで後を追う。
「フロイド?」
階段の途中でジェイドが大きな声でフロイド。呼んだ。
「フロイドっ」
何も返事が無い。
「ジェイド先輩っ…」
「ええっ…」
ジェイドが階段を駆け上がる。
そして走ってフロイドの部屋へ行く。
「フロイドっ!」
フロイドが机の前で倒れていた。
「フロイドっ、フロイドっ!」
「フロイド先輩っ!」
「ううっ……」
苦痛な表情を浮かべてフロイドがうめき声を出した。
「頭が痛いのですね?」
「……うん…」
ジェイドはフロイドを抱きかかえて急いでベッドに寝かせた。
「今薬をっ…」
ジェイドが机にある何種類もの薬の袋の中から、頓服で服用する痛み止めを出した。
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時