難しい生活 〜4〜 ページ31
「ジェイド先輩っ。今、キッチンにいますよ」
「分かりました」
廊下からジェイドの足音が聞こえる。
「おはようございます。昨日は良く眠れましたか?」
「何で来たんだよ…」
「おや。兄が弟を心配するのは当たり前でしょう?しかも、目が見えないという、最悪な状態で放っておける訳ないでしょう」
「最悪な状態って…」
フロイドはムッとした。
「ふふふ。悔しかったら全て一人で出来るようになることですね。まあ、それも無理でしょけど」
「なんか突っかかる言い方してくんなぁ〜…」
「そうですか?僕はいつもと変わりませんし、フロイドが心配で心配でたまらないだけですよ?」
「ジェイド先輩。でも、フロイド先輩は一人で色々なことやってますよ。昨日の食堂でだって、上手く食べられたし、階段だって登り降り出来るんですよ」
「そうでしたか。それは凄いですねぇ」
まるで子供を褒めるような口調だった。
「チッ…。冷やかしに来たんなら早く帰れよ。しかもこんな大雨の中来やがって…」
「別に雨は問題ありません。フロイド。薬、飲み忘れていないでしょうね?」
「………」
「薬?」
「Aさんに伝えていないのですか?」
「フロイド先輩、薬って何ですか?私、何も聞いてませんよ…」
「はぁ…。やはり来て正解でした…」
「うるせぇな…。忘れただけだよ…」
「どこにあるのです?」
「……オレの部屋…」
「あぁ…。全く飲む気無い証拠ですね。自分の部屋に薬を置いておくなんて…」
「もしかして、痛み止めですか?」
「ええ。頭痛は未だに不定期でフロイドを襲っています。それとめまいを緩和させる薬。今からでも良いですから、朝、昼、夜、必ず服用しなさいね。これは副寮長命令です」
「……分かったよ…」
「Aさんの前で倒れたらどうするんです?守るどころか迷惑かけまくりではありませんか」
「分かったっつってんだろ…」
「僕が薬を持ってきますから、待っていてください」
「オレが取り行くっ」
フロイドが乱暴に立ち上がった。
「フロイド先輩っ」
「やらせておきなさい。自分で取りに行くと言ったんですから」
ジェイドは少し怒っていた。
〜フロイド先輩が戻って来て、嬉しいんじゃ、ないの…?〜
フロイドは物に触れながらキッチンの出口まで行った。
そしてそのまま黙って廊下を歩いていった。
「Aさん。疲れるでしょう?僕もお手伝いしますから、遠慮なく言ってくださいね」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時