難しい生活 〜3〜 ページ30
トレイにマグカップを乗せ、持ち手が取りやすい向きにしてフロイドの前に差し出す。
「そのまま真っすぐ左手を伸ばせばマグカップの持ち手がありますよ。……私がフロイド先輩に渡しても良い?」
「ダメ〜!過保護〜っ」
「…ですよね…」
「今は練習中だからさ。一通りオレ一人で出来るようになりたんだ〜」
「分かりました。でも、無理はしないでくださいね」
「うん」
フロイドがゆっくりと左手を伸ばしていく。
そしてマグカップの持ち手を見つけた。
「ほらね〜。出来たよ〜」
「はいっ。熱いから気を付けてくださいね」
「うん」
フロイドが上手に飲めるのを確認して、Aはまた朝食作りを始めた。
「朝ご飯、トーストとスクランブルエッグにサラダですけど、足ります?」
「うん。スクランブルエッグいっぱい作って〜」
「もちろんですっ」
「オレ、Aが作るスクランブルエッグ、大好きなんだよね〜」
「はい。いつも言ってくれますよね。嬉しですよ」
「このお茶も、美味しい〜」
「うふふ。ありがとうございます」
「ん〜?電話鳴ってる〜」
フロイドがマグカップを持ちながらポケットからスマホを取り出した。
少しスマホを握りしめ、バイブ音のリズムを聞いているようだった。
「ジェイドだ〜…」
フロイドは椅子の後ろの作業台に慎重にマグカップを置き、スマホを2回タップして電話に出た。
〜バイブ音だけで誰からの着信か分かるんだ…〜
フロイドは抜け目ないほど準備をして、代償を払う日を迎えたのだ。
「ジェイドー?……うん。あのさぁ。オンボロ寮がすげぇ雨漏りしてたんだけどぉ〜。………うん。……オレが魔法で全部直したけどさぁ。………」
別に会話を聞かれたくない様子でも無かったので、Aはそのまま朝食の準備を進めた。
電話はそんなに長くないうちに終了した。
「ジェイドがさぁ、すっげぇ心配してんの」
「特に何も問題なかったですよね?」
「うん。今から様子見に行くっつーからぁ、断った〜」
「断ったの?」
「うん。だって別に普段と変わんねぇだろ?」
「そうですけど…。ジェイド先輩は、フロイド先輩の目の状態とか心配してるんじゃないんですか?」
「目はもう大丈夫〜」
「そう…ですかね…」
「朝飯、もう出来る?」
「はいっ。食べましょう」
「フロイド、Aさん。お邪魔しますよ」
朝食を食べ終わる頃、玄関からジェイドの声がした。
「はぁっ?」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時