難しい生活 〜2〜 ページ29
「今まで雨降ってもこんな事無かったのに」
「それだけ今日の雨が強いんじゃね？」
「そうですね」
フロイドが真上にマジカルペンを向けた。
一瞬、柔らかい光が天井に向って走った。
「どお？」
「……止まった…かな…？」
しばらく天井を見る。
「大丈夫そうです。もう水が落ちてくる事ないです」
「じゃ、この調子で全部直そ〜」
「疲れませんか？」
「こんなのよゆーだよ〜」
フロイドはAに教えてもらいながら雨漏りを魔法で全て直してしまった。
「あ〜。腹減ったぁ〜」
「ありがとうございます。お茶淹れながら、朝ご飯何か作りますから」
「じゃ、今日はAにお願いしちゃお〜」
「はいっ」
「A、先にキッチンいってらっしゃーい」
「本当に大丈夫？」
「ちゃんとA見つけるからぁ」
「分かりました。気を付けて降りてきてくださいね」
「うん」
Aは先にキッチンに行き、お茶と朝食の準備を始めた。
〜遅いな…〜
心配になったが、フロイドを信じ、待つ。
ガタンッ…
Aが棚から食器を出そうとした時、キッチンの入口の方から大きな音がした。
〜フロイド先輩っ〜
フロイドがキッチンにある椅子に足をぶつけた。
「声出しちゃダメだよ〜」
椅子にぶつかった事など気にもせず、フロイドがAに近付いてくる。
途中、いくつか物があり、何度かぶつかる。
Aは食器を取るのをやめ、フロイドの方を見て待った。
そしてフロイドが目の前まで来て、左手を握った。
「見つけた〜」
「凄いですっ！」
Aの左腕を伝い、身体の位置を確認して抱きしめる。
「ほら。抱きしめるのも出来るんだよ〜」
「良く頑張りましたっ」
「まだ時間かかっちゃうけどぉ、赤い糸がいつも見えてればAの所にすぐに行けるね〜」
「そうですね。でも、これからも赤い糸、見えたままなのかな…」
「分かんねぇけど、今はずっと見えてるからいーよ」
「そうですね。お茶だけ、用意出来てますよ」
「サンキュー」
「フロイド先輩の後ろにある椅子に座れますか？」
「うん」
「座って待ってて。私が持って行きますから」
「うん」
フロイドが向きを変え、椅子を探して座る。
それを確認してAがお茶をフロイドに持って行く。
「これくらいは私にもさせてくださいね。別にフロイド先輩を過保護にしてる訳じゃないですから」
「分かってるよ〜」
フロイドが焦点の合わない目でAを見て微笑んだ。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月2日 17時
