フロイド 復活 〜7〜 ページ23
「いくら〜?」
Aはそれを黙って見守った。
財布から紙幣を出す。
「おばちゃん、これで合ってる?」
「凄いわねぇ。紙幣も硬貨も合ってるわよー」
〜すごい…。きっと…、目が見えてた時から触って覚えてたんだ…〜
Aの知らない、フロイドの努力が見えた気がした。
「フロイド先輩、お金、触るだけで分かるの?」
「うん。大体だけどね〜」
フロイドは財布をしまい、Aの声がする方を見た。
「今日はぁ、オレの奢りぃ〜」
「うふふ。ありがとうございます。嬉しい…」
「うん」
Aは席にいる生徒たちをチラッと見た。
やはりこちらを見ている生徒がいる。
「………」
「A?」
「はい、お待たせーっ。2人のトレイ、私が席まで運んであげるよー」
食堂のおばちゃんが2つのトレイを持って注文カウンターから出てきた。
「えー?おばちゃーん。オレ大丈夫だよ〜」
「遠慮しないのっ!お姉さんだってその方が安心だよねぇ?」
「えっ…。あぁ…、はい…」
「ほら。席はどこにするの?」
「しょーがねぇーなぁ…。じゃ、運んでよ。A。好きな席に行こ」
「はい。フロイド先輩。私の左腕に掴まってください」
「はいはい…」
フロイドは大人しく言う事を聞いてくれた。
自分だけで移動するには時間がかかりすぎる。
食堂のおばちゃんにトレイを運んでもらい、2人は席に着いた。
「じゃ、食べよ〜」
「はい。いただきます」
フロイドはテーブルの上のトレイを触り、食器の位置を確認した。
箸を見つけ、上手に持つ。
右手で生姜焼きが乗った皿に触れ、左手で持っている箸で肉を探し、肉を取る。
顔も少しトレイに近づけ、上手に肉を口に入れた。
「美味いねぇ〜」
「ラザニアも美味しいですよ。食べます?」
「うん」
Aが生姜焼きとラザニアをトレイごと交換した。
「ラザニアはめんどくせぇからスプーンでいーや。スプーンここにある?」
「はい。取りましょうか?」
「ううん。大丈夫〜」
フロイドが生姜焼きと同じ様に手でスプーンを探し、持つ。
「ラザニアの器、凄く熱いから手で触ったら火傷しちゃいますよ?私が取り分けますから…」
「大丈夫だってぇ〜」
フロイドはラザニアの器近くに手をかざし、熱を感じ取った。
「ここに器あるでしょ?」
「はい」
かなり真ん中にスプーンを刺してしまったが、ラザニアをスプーンで適当に切ってすくった。
「チーズのいい匂いするねぇ〜」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時