フロイド 復活 〜6〜 ページ22
フロイドがAの方へ向く。
しかしそれも少し方向がズレている。
Aはそっと向きを合わせて移動した。
「こういう事もあるよねぇ〜……」
「私なら階段なんて登れないと思います。フロイド先輩は凄いですよ。カフェオレだって作っちゃうし」
「うん……」
少し元気がない声でフロイドが返事をする。
「やっぱAの腕貸してぇ〜」
「はいっ」
Aは左腕をフロイドの側に出した。
「そのまま真っすぐ手を伸ばしてください」
「ありがと」
フロイドがAの腕を掴み、Aの誘導で食堂に入った。
食堂に入ると、やはりフロイドは注目の的だった。
ヒソヒソとフロイドの事を話している生徒もいる。
フロイドはそれが聞こえていた。
「オレの事、みんな見てんだろ？」
「はい…」
「行こ。メニュー教えてぇ〜」
「はい」
2人はフロイドをジロジロ見てくる生徒たちを無視してメニューを見に行く。
「アイツ、両目無くなったんだろ？メニューなんか見てどうすんだよ…」
「面白いから見てようぜ…」
Aにも聞こえてくる。
「ちょっと！フロイド先輩に失礼でしょっ！」
Aが思わず大きな声で言い返した。
「ほっとけよ、A」
「ほっとけないですよっ！何で面白がってんの？おかしいんじゃないっ？」
「あははっ！Aがキレたぁ〜」
「フロイド先輩！フロイド先輩の事を言われてるんですよ？笑い事じゃないでしょ！」
「いーんだよ。そのうち飽きるってぇ〜。で、今日のメニュー、何があんの？」
「………豚肉の生姜焼き定食っ。……ブリの照り焼き定食っ。ラザニアっ………」
「オレ、生姜焼き〜！Aは？」
「私も同じで良いですっ！」
「うん。じゃ、Aはラザニアね〜」
「何でそうなるんですかっ！」
「そんな怒るなよ〜。オレ、ラザニアも食べたいからぁ、シェアして食べよ」
「……分かりました…」
「うん。じゃ、注文するよ〜」
──フロイドは本当に強いですから──
Aはジェイドの言葉を思い出した。
〜こういう所が…、強い…って言ってるのかな…〜
そんな事を思っているうちに、フロイドは白杖を使って注文カウンターまで進んで行く。
今度は真っすぐ向かっていた。
「おばちゃーん。生姜焼き定食とぉ、ラザニアちょーだーい」
「はいはーい！」
食堂とおばちゃんも恐らく噂でフロイドの事は知っているはずだ。
しかし何も触れずにいつも通り対応してくれる。
フロイド先輩が財布を出す。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月2日 17時
