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見えない生活 〜15〜 ページ15

「食欲があることは良いことです。熱は少し気になりますけど、夕食前にまた測りに来ますね」

看護師はテキパキと片付けて部屋を出て行った。

「フロイド先輩、熱大丈夫なんですか?」

「うん。全然いつもと変わんねぇよ」

「なら良いですけど…」

「Aさん。僕たちもそろそろ帰りましょう」

「そうですね…」

「えー?Aはここに泊まって行きなよ〜。明日も休みだろ?」

「そうですけど…。病院に泊まるなんて出来ませんよ」

「フロイド。僕たちが長くいれば休まる暇もないでしょう?また明日改めて来ますから」

「……分かったよ…。残りのクッキー、オレの手の届く所に置いといてよ」

「分かりました」

Aがベッドの横にある小さな棚の上にクッキーを置いた。

「フロイド先輩。頭の左側に棚があるので、その上にクッキー置きました」

「うん」

フロイドは点滴が付いたままの左手を伸ばし、棚とクッキーの位置を確認した。

「おっけー。ありがと」

フロイドが更に腕を伸ばして何かを探す。

「A」

「はい」

「おいで」

「はい」

フロイドの伸ばした腕をAがそっと握る。
すると勢い良くフロイドの方へ引き寄せられた。

「フロイド、ではまた明日。Aさん、僕は部屋の外で待っていますね」

「はい…」

ジェイドは部屋を出て行った。

ドアが閉まる音を聞き、フロイドはAを力強く抱きしめた。

「少し、このままいさせて…」

「頭痛、大丈夫?」

「うん」

「身体、熱いですよ?さっきより熱上がってるんじゃないんですか?」

Aがフロイドの首を触った。

「Aがいるから大丈夫だよ…」

「でも、私もうすぐ帰っちゃいますよ?」

「明日も来てくれるんでしょ?」

「迷惑じゃないなら…」

「毎日来て…」

「毎日ですか…?」

「ここに…住みなよ」

「何言ってるんですかっ」

「………」

「フロイド先輩?」

「うっ……」

Aがフロイドの顔を覗き込む。
目に包帯を巻かれていても、苦痛な表情をしているのが分かった。

「フロイド先輩っ!」

「うぁぁっっ………」

声を押し殺すようにフロイドが唸った。

「フロイド先輩っ!……ジェイド先輩いますかっ?ジェイド先輩っ!!」

Aが叫んだ。

その直後、ジェイドが勢い良くドアを開けて部屋に入って来た。

「フロイドっ」

「急に苦しみ出して……。フロイド先輩っ!」

フロイドにまた激痛の波が襲って来た。

ジェイドはすぐに枕元のナースコールを押した。

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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時

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