見えない生活 〜11〜 ページ11
「A…。大好きだよ…」
「フロイド先輩…」
「目が見えなくても…Aの事は見えるよ…。今、嬉しい顔してるでしょ?」
「うふふ…。はい。その通りです」
「ほらね。オレ、Aの事なら分かるよ…」
フロイドがまた頬に触れた。
「早く寮に帰って…、Aをいっぱい抱きたいなぁ〜…」
「待ってますから…。だから…、ちゃんと先生の言う事聞いて早く治してくださいね」
「うん…」
「約束ですよ?」
「うん。約束…」
フロイドはAを力強く抱きしめた。
今のフロイドにとっての特効薬はAだった。
「……腹減ったぁ〜」
「ずっと食べてないですもんね」
「うん。オレにクッキー焼いてきてくれたんでしょ?」
「はい。…でも、勝手に食べて良いのかな…」
「うん。食べたい」
「一応…、看護師さんに確認してきますね」
「えーっ?いーじゃーん…」
「勝手にクッキー食べて、治るの遅くなったらどうするんですか?私を抱ける日が遅くなっていくんですよ?」
「んな訳ねーじゃん…」
「郷に入れば郷に従えって言うでしょ?約束したばっかりじゃないですか」
「はいはい…」
「ちょっと待っててくださいね」
Aはフロイドから離れて起き上がった。
そしてナースステーションへ向かった。
数分でAが戻って来た。
「フロイド先輩っ…。起き上がったの?大丈夫ですか?」
「うん。だってぇ、クッキー早く食べたいもん。で、おっけーだった?」
「はいっ。私、看護師さんたちに褒められましたよ。クッキー焼いてあげるなんてお兄さん思いなんですねって」
「うん。自慢の妹」
「うふふ。先生は本当の事に気付いてたみたいですけどね」
Aが袋からタッパーを出す。
「タッパーに入れてきました。この前見つけた型抜きで色々な形のクッキーを作ったんです。何の形か当ててみませんか?」
「いーねぇ〜。やろーよ」
「私も一緒にやりますね」
「うん。タッパーごとちょーだい。オレが蓋開ける〜」
「分かりました」
Aはそのままフロイドの右手を持ち、手のひらの上にタッパーを乗せた。
「本当に大きい手…。タッパー掴めちゃいますね」
「よゆーで掴めるよ。ほら」
フロイドがタッパーを掴んで揺すった。
「重さもあるし、振った時の音からしてぇ、結構な量だねぇ〜」
「はいっ。でもジェイド先輩が、フロイド先輩と2人で食べ切れる量だって言ってましたよ」
「えーっ?ジェイドにもあげるのぉ?」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時