見えない生活 〜2〜 ページ2
「ではまだ意識が戻らないのですね…」
「貧血からの意識障害だけではなさそうです。やはり、何の麻酔もなく突然身体の一部を切り取られると言うのは、脳にも相当のダメージを与えるようなので…」
「フロイド先輩…」
「Aさん。フロイドは恐らく、こうなる事も予想していたはずです。それを僕たちには一切口にせず、平然を装っていたのですよ」
「フロイドは、Aさんを僕の部屋へ連れて行くように頼んでいました。それも無理だと言うことも、分かっていたのでしょうけど…」
「フロイド先輩をジェイド先輩が病院に連れて行くって分かっていたって事ですか?」
「ええ」
「フロイドは昔から変に強がる所がありましたからねぇ…」
「ふふふ。気分屋で強がり…。手の焼ける弟ですよ」
「特にAさんには余計にそんな姿を見せたくないでしょう」
「弱い所があるフロイド先輩だって…良いじゃないですか…」
「そう思うでしょう?でも、それを強がるのがフロイドなのですよ」
「ジェイドも負けず嫌いでしょうに…」
アズールがボソッと呟いた。
「おや、何か言いました?」
「いえ。何も言っていませんよ」
「フロイド先輩は…、これからどうなるんですか?」
「傷の状態は良いそうなので、後は貧血が回復すれば…少しは動けるのですが…。義眼も入れるので、また手術が必要になります。早くても数週間は入院させられるでしょうね」
「そうですか…。義眼も…」
「義眼を入れていないと、眼球のあった部分が凹んでしまうのです」
ジェイドはそれをもろに見ている。
「本来の人間の顔とはかけ離れてしまいますからね…」
「………」
「この話は終わりにしましょう」
「はい…」
「大丈夫。フロイドは強いです。強がりだけでなく、本当に強いです。こんな事ではへこたれませんよ」
「ジェイド先輩が言うなら、そんなんですね。私もフロイド先輩が元気に帰ってくるまで頑張ります…」
「ええ。元気にお迎えしてあげられるようにしましょうね」
「はい」
「アズール。この後、僕はまた病院へ行ってきます。場合によっては今夜もこちらに泊まってもらうことになるかと思いますが、状況が分かり次第、連絡しますね」
「ええ。こちらの事はご心配なく」
「Aさん。夕飯も、しっかり食べてくださいね」
「はい」
「では、僕はこれで失礼します」
ジェイドはオンボロ寮を出て行った。
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時