見えない生活 〜1〜 ページ1
エペルは事あるごとにAを気遣ってくれた。
昼休み。
「A、お昼、今日は一緒に食べられる？」
「うん」
「良かった…。じゃぁ、食堂行こう」
「あんまり食欲無くて、残しちゃうかもしれないけど…」
「大丈夫だよ。食べられるだけ食べて、残ったらボクが食べてあげるから」
「ありがとう…」
食堂に行くとちょうどジェイドと出くわした。
「おや、Aさん。今日はエペルさんとご一緒ですか」
「はい…。あの…フロイド先輩は…」
「あ、ボク、邪魔ならいなくなるんでっ」
エペルがその場を去ろうとした。
「エペルさん、待ちなさい」
ジェイドがエペルを引き止めた。
「僕は特にAさんに用はありませんよ。ですから、２人でゆっくりランチを楽しんでくださいね」
「え…。でも…」
「今のAさんにはエペルさんが必要です。Aさん、僕とお話がしたければ、放課後オンボロ寮へ伺いますから。さ、美味しい物をたくさん食べてらっしゃい」
「分かりました…」
本当は今すぐにでもフロイドの様子をジェイドに聞きたかった。
しかしジェイドはそれを拒んだ。
さすがにこの人の多さの中では話せないだろう。
それに、緊急であればすぐに知らせてくれるはずだ。
フロイドは恐らく落ち着いていると言うことだろう。
Aはジェイドに言われた通り、エペルと昼食を取ることにした。
「ジェイド先輩、フロイド先輩が入院してるのに、あんなに毅然とした態度が出来るなんて、さすがって言うか…、強いんだねー」
「そうだね…」
「フロイド先輩がいつ戻って来ても元気なAでいられるように、ちゃんと食べようね」
「うん。ありがとう」
エペルは色々な話題を振ってくれた。
お陰でAも少しだけ気持ちが軽くなれた。
放課後。
教室にアズールが迎えに来た。
「ジェイドがオンボロ寮でお茶を用意して待っています。行きましょう」
「はい…」
ツカツカと歩くアズールの後ろを、Aは付いて行った。
「お帰りなさい。お茶、用意出来ていますよ」
談話室に入ると、ジェイドが待っていた。
「ありがとうございます…」
「お昼、たくさん食べられました？」
「はい…。少し残しちゃいましたけど、エペルがフロイド先輩に元気な私を見せないとって、励ましてくれて…」
「ふふふ。やはりAさんにはエペルさんの様なお友達が必要ですね」
「病院から連絡は？」
アズールがジェイドに聞いた。
「いえ。何も…」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月2日 17時
