先手必勝 〜3〜 ページ34
「うん。これで大丈夫」
「ありがと…」
「Aさぁ。キミの事で心がいっぱいだよ?代償を払ってでも、この世界に留まらせる価値は充分すぎるほどあると思うよ」
クリスがAの頭をそっと撫でた。
「A…。良かったね、フロイドと出会えて。ボクが出来る限りの事、してあげるから。Aもステラに負けちゃダメだよ」
「それも…、何かのまじない?」
「……ううん。願掛け」
「神様が願掛けかよ…」
「利いたら良いなぁってねー…」
クリスが立ち上がってフロイドを見て笑った。
「それに先手必勝って言うでしょ?もし、この後本当にステラがAにマインドコントロールを仕掛てきたら、ボクたちの願掛けの方が先だった分、利き目が強いかもしれないじゃーん」
「根拠もねぇけど、なんかそんな気がしてきたよ」
「でしょー?今はボクの出来ることは全部やったからぁ、また、フロイド。キミが頑張るんだよー」
「うん」
「じゃ、またねー」
クリスは風のように消えた。
フロイドは急いでベッドに入る。
ベッドに入ったと同時にAが目を覚ました。
「あれ…」
「うん。それで?」
「あぁ…、えっと…。何だっけ…。夢って目が覚めると忘れちゃいません?」
「あるよねぇ〜」
「せっかく覚えてたんだけどな…」
「Aさ、一瞬、寝落ちしてたよ?」
「……だからかな…?フロイド先輩に夢の話ししてましたよね?」
「うん」
「まぁ…そんな感じの夢を見ました。終わりです」
「うん。じゃ、いい匂いタイムね〜」
「はいっ…」
いつもの朝が始まった。
しかし、いつもの朝も、そう長くは続かなかった。
それから半月程が経ったある日。
傷痕が薄くなってきたので昨晩フロイドはAに毒を入れた。
朝。
いつものようにうさぎの目覚まし時計のアラームが鳴る。
それをAが止める。
「フロイド先輩…。おはようございます」
フロイドがすぐにAを抱きしめる。
「おはよ…。いい匂いタイム…」
「しなくちゃ…ダメですか…?そろそろ、やめません?」
「えっ?」
フロイドが思わず顔をあげた。
「まず、服着たいです…」
「あ…うん…」
フロイドは嫌な予感がした。
「A。傷痕見せてっ」
急いでAの手を取った。
「やっぱり…」
「薄く…なってますね…。また、毒…入れるんですか?」
「入れなかったら消えちゃうんだよ?」
「……分かりました」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年5月1日 15時