人魚のフロイド 〜4〜 ページ28
「海水、冷たくなってきたけど大丈夫？この先もう少し冷たくなるけど」
「日差しが強いから大丈夫です」
「じゃぁ…、もっと遠くまで行っていい？」
「はいっ」
「そしたらさぁ。今度はオレの背中に乗ってしっかり掴まっててね。結構スピードあげて泳ぐよ〜」
「私、落ちませんかね…」
「オレが落とすワケないでしょ？」
「すみませんっ…」
フロイドは水中でクルッと向きを変えてAを背中に乗せた。
「オレの肩に掴まってなよ」
「分かりました」
「じゃ、行くよ〜」
フロイドがゆっくりと泳ぎ出す。
そして少しずつスピードをあげていく。
「うわぁ…。気持ち良い…」
「もっと早く行くよ〜」
更にスピードをあげて泳ぐ。
「怖くない？」
「はいっ。凄く気持ち良いし、楽しいですっ。海岸があんなに遠くに見える…」
「たぶんね、人間だったらこの潮の流れに飲み込まれて戻れなくなってるよ」
「怖い事言わないでくださいよ…」
「本当だよ？」
Aのフロイドを掴む手に力が入る。
「オレがいるから大丈夫だってぇ〜…」
「そうですけど…。ちなみに、ここは水深どのくらいですか？」
「分かんねぇけどぉ…」
フロイドが少し顔を水中に入れて下を見る。
「たぶん…2、300ｍくらいじゃね？」
「うわっ…」
「オレにとったら浅い方だよ〜」
「人魚って本当に凄いですね…」
「人間の陸の生活もすげぇと思うけどねぇ…」
「無い物ねだりですね」
「うん」
フロイドはどんどん泳いで行く。
「遠くに船が見える…」
「向こうからオレたちは見えないだろうね」
「人魚がいるって知られたらダメなの？」
「全然。人魚ってさ。この世界だとまあまあ人間と交流あるんだよね。でも、やっぱ珍しいみたいでさぁ…。『人魚だ〜っ！』とか言ってみんな物珍しそうに寄ってくんだよねぇ。それがめんどくせぇだけぇ〜」
「触ってくる人もいる？」
「うん。勝手にベタベタ触ってくるよ。追いかけて泳いで来るヤツもいるし」
「確かにそれは嫌ですね…」
「だから、こーやって人がいないところで好き勝手に泳ぐんだぁ〜」
「人の目がないって、良いですね」
「でしょ〜？あ、見えてきた」
「島…？」
「うん。あそこで休憩しよ」
「はい」
とても小さな砂浜だけで出来た島がある。
フロイドはそこに向かった。
「A、足、そろそろつくでしょ？降りて大丈夫だよ」
「はい」
「そのまま砂浜まであがってね」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年5月1日 15時
