人魚のフロイド 〜3〜 ページ27
次に胸を触る。
「胸なのに…魚みたい…」
「尾びれ、見る?」
「見たいです」
フロイドはAの手を引いて砂浜にあげた。
「手も…ヒレみたいになってる…」
「そ。オレは足ないから砂浜に上がれないけど、ほら」
フロイドが出来る限り砂浜に胴体と尾びれをあげる。
「ウツボだ…。しかも凄く長い…」
「触っていーよ」
「鱗?」
「うん」
「本当に魚…」
「人魚だからね〜…。魚と同じだよ〜」
「これが本当のフロイド先輩の姿なんですね…」
「うん。どっちが好き?」
「選べない…。人間のフロイド先輩も大好き…。でも、ウツボの人魚のフロイド先輩も大好き…」
「人魚は海に来たときしか見せてあげられないけどね。じゃ、そろそろ泳ごっか〜」
「はいっ」
Aがまた海に入る。
「私、あんまり上手く泳げないんです…」
「別にいーよ。オレがついてるから」
段々と水深が深くなり、Aの足がつかない深さまでやって来た。
「フロイド先輩…怖いです…。足がつかなくて…波が来ると…」
「うん」
フロイドがすぐにAを抱き上げた。
フロイドが仰向けになり、Aをお腹の上に乗せた。
「これなら怖くない?」
「ありがとう…。でも、フロイド先輩が泳ぎづらそう…」
「人魚をナメんじゃねぇよ?」
フロイドがニヤリと笑った。
そのままゆっくりとフロイドが泳ぎ出す。
「重くないですか?」
「A軽いじゃん。それに、海だから尚更軽くなるでしょ?」
「そっか…。そうですね」
「A。海の中、見てみ。ちっちぇ〜魚、いっぱいいるよ〜」
既に数十mはあるであろう水深まで来ていた。
海水も突然冷たくなった。
「本当だっ。凄く透明度が高いんですね。潜ってないのに私からも見える…」
「オレたちはさ。この深い海の底まで泳いで行くんだよ。そして、そこにはオレたちの故郷があるの」
「えっと…珊瑚の海…でしたよね?」
「うん。いつか、Aを連れて行ってあげたいなぁ…」
「たどり着く前に私、死んじゃいますよ」
Aがクスッと笑った。
「オレがこのまま陸にあがったら死んじゃうのと同じだね〜。あははっ」
「死んじゃダメですよっ!」
「Aも死んじゃダメっ!」
「大丈夫ですっ!死にませんからっ」
「あははっ!何この会話〜っ」
「本当…。バカなカップルの会話みたいですね」
「オレたちバカなんじゃね?」
「そうですね。きっとバカですね」
変なテンションな二人になっていた。
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年5月1日 15時