人魚のフロイド 〜1〜 ページ25
契約印はAにも誰にも気付かれることはなかった。
土曜日。
今日はフロイドとAの二人で海へ行く。
街の店のオープン時間に到着出来るようにオンボロ寮を出て、店で水着を買う。
「フロイド先輩…。今頃なんですけど…」
「なぁに?」
「海の水…、肩の傷についたら痛いですよね…」
「うん。塩水だからね。でも大丈夫だよ。オレが治癒魔法で治してあげるから」
「そんな事出来るんですか?」
「うん。傷はなるべく自然に治すけど、緊急の時とかは魔法で治しちゃうよ」
「良かった。ありがとうございます」
ホッとした顔でAが水着を選ぶ。
「小エビちゃん何色にするの?」
「うーん…。悩む…。フロイド先輩にまた選んでもらいたいな…」
「おっけー」
フロイドが当たり前のように色やデザインを選ぶ。
〜これが…、出来なくなるんだな…〜
後悔はしていない。
しかし、まさか盲目になるとは思っていなかった。
それでもAとこの世界で生きていきたい。
暗い考えを振り払い、フロイドは水着選びを楽しんだ。
「小エビちゃんさぁ。青とか水色が似合うからぁ…。これは〜?」
Aの身体に水着を当ててみる。
「い〜じゃーんっ!じゃ、これにしよ」
「水色?」
「うん。青より水色の方が優しいしさ。デザインもシンプルでカッコイイし」
「はいっ」
水着を買い、二人は海へ向かった。
街に面した海岸は人がたくさんいた。
フロイドはそこをどんどん通り過ぎて行く。
「バスでもいーんだけどさ。こうやって歩くのもいーでしょ?」
「はい。ピクニックみたいで楽しいですね!」
「そーだねー。ピクニックも、今度行こ」
「そしたら、サンドイッチとか持って…。夏も良いけど秋の紅葉シーズンはどうですか?葉っぱが色々な色に染まって、凄く綺麗だし」
「……うん。じゃ、秋にピクニック行こーね」
「うふふ。フロイド先輩といっぱいお出かけ出来るの嬉しいな…」
「オレもだよ〜」
「冬のスキーは?」
「オレ人魚だよ?スキー出来るワケねぇじゃん」
「じゃぁ、私が教えてあげますよっ」
「え〜?小エビちゃん教えられんのぉ〜?」
「こう見えて、結構スキー上手なんですよ!あ、でもスキーがダメならソリとか…雪合戦とかも面白いかも!かまくらも作ってその中でティータイムとかして…」
「小エビちゃん欲張りだねぇ〜。あははっ」
フロイドがAの肩を抱き寄せる。
秋まで毒が持つか分からない。
いちいちそう言う事が頭を過る。
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年5月1日 15時