兄弟の溝 〜2〜 ページ16
放課後。
今日もラウンジの仕事だ。
フロイドはAとモストロ・ラウンジのバックヤードへ入った。
「Aさんと一緒だと、出勤時間も守れるのですね」
「ジェイド先輩。私が時間を気にするタイプなので、フロイド先輩がそれに合わせてくれているんです」
「そうでしたか。Aさんにはとても優しいのですねぇ」
ジェイドがAを見ながら微笑んだ。
「はい。いつもフロイド先輩は私に優しくしてくれますよ」
「小エビちゃん。余計なことジェイドに言わなくていーの」
「でも、兄弟ならいろんなこと、知ってて欲しくないですか?」
「Aさん、ありがとうございます。フロイドの意外な一面、知ることが出来ました。さて、オープンまでの一時間、フロイドはラウンジの掃除、Aさんは僕と昨日の復習をやりましょう。そして更に次のステップに進みましょうね」
「はいっ。よろしくお願いしますっ」
「フロイド。さっさと掃除してきなさい」
「チッ…。うるせぇな…」
「Aさん。フロイドが掃除をサボるかもしれませんので、僕たちもラウンジでサービスの練習をしましょう」
「え…?」
「今ならお客様もいません。実際にキッチンからテーブルまで運ぶ一連の動作も確認出来ますし」
「はい…。分かりました」
ジェイドはラウンジでフロイドの監視をしながらAへの指導もし、更に他のスタッフへの指示出しまでこなしていく。
「うーん…。トレイをもう少しまっすぐ安定させないと…」
ラウンジのテーブルの前でジェイドがAの動きを見ながら指導する。
「こう…でしょうか…」
「いいえ…。もっと、こう…」
ジェイドがAの後ろに立ち、トレイを持つ腕を一緒に持った。
「そして腰を少し落として…」
完全にジェイドがAにくっついている。
「あの…」
「何です?」
「…いえ…」
「集中してください。ここで料理を落としてしまったら台無しですよ…」
ジェイドが後ろから耳元で囁いてきた。
「はい…」
「……Aさん…。とても良い匂いがしますね…以前もそう思いましたが…」
ジェイドの言葉にAがドキッとした。
「おいジェイドっ!小エビちゃんから離れろよっ」
「何を言っているのです?見てわかりませんか?サービスの指導中です。余計な口出ししないでください。目障りです」
「いくらなんでもやり過ぎだろっ!」
フロイドが箒を床に投げつけて二人の前へズカズカとやって来た。
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年5月1日 15時