フロイドの毒 〜4〜 ページ10
Aはぐっすり眠っているだけで、苦しそうな表情もしていない。
ただ高熱があるだけだ。
「小エビちゃん…。もしかして、身体の中でウツボちゃんの毒とオレの毒が戦ってんの…?」
そうだとしたら期待が持てる。
フロイドは勝手にそう解釈した。
ほんの少しの希望を持って、フロイドはまたソファーに戻って寝転がった。
朝。
フロイドが目を覚ました。
今日は祝日の金曜日だ。
フロイドはあえてアラームをかけなかった。
時計を見ると7時半だった。
フロイドにしては早起きだ。
すぐにAの様子を見に行く。
おでこに乗せたタオルはぬるくなっている。
氷枕は水になっていた。
首を触る。
「……変わんなそう…」
Aの体温を計る。
「40.1℃…」
熱は下がらなかった。
Aも起きる気配がない。
「小エビちゃん…?」
「ん…」
少し反応した。
「小エビちゃんっ」
フロイドがもう一度声を掛けた。
「……フロイド…先輩…」
Aがダルそうに目を開けた。
「小エビちゃん…。40℃も熱あるよ…」
「…そう…ですよね…。熱いし…頭痛い…」
Aがまた目を閉じた。
「冷たいタオル、持ってくるね…」
フロイドの言葉に反応がない。
また眠ってしまったようだ。
フロイドはAに冷たいタオルをおでこに乗せ、じっと様子を見た。
「小エビちゃん…」
やはり苦しそうな様子はない。
フロイドはスマホを取り出してジェイドに電話をした。
「ジェイドー…。小エビちゃん、熱出ちゃった……。…うん。40℃……。今冷やしてる……」
しばらくジェイドと話しをした。
30分程すると、ジェイドがオンボロ寮へやって来た。
フロイドはジェイドをAの部屋に入れた。
「特に苦しそうな表情はしていませんね」
「うん。昨日の夜、頭痛いって言って痛み止めも飲んだんだよね。で、早めに寝かせたんだけど、その時に37.5℃熱あってさ。夜中にまた熱計ったら40.3℃で…」
「うーん…。疲れ…にしては異常な体温ですよね…」
「昨日の夕方に、オレの毒が効くかもって思って小エビちゃんに噛みついてみたんだよね」
「フロイドに毒?しかも…Aさんに噛みついたのですか…?」
「いーじゃん…。何もしないよりは少しでも可能性信じてやってみた方がいーだろ?」
「僕たちに毒なんてありませんよ…」
「知ってるよ…。でもさ、小エビちゃんにだけ有効な毒、オレ持ってるかもしんねーじゃん」
「ぶっ飛んだ発想ですね。嫌いじゃないですよ」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年4月23日 16時