あの人物 〜1〜 ページ32
「異世界の人間って、どんなモノなのかなぁ？って思ってね。ボクも興味があるんだよね」
「だからっ。誰の許可もらってそんな事言ってんだっつってんだよっ！」
「何そんなにムキになってるの？キスくらい別に良いじゃない。減るモノじゃないでしょ？」
「そう言う問題じゃねぇだろうがっ」
「ははっ。この子に夢中なんだねぇ」
「Aから離れろっ」
「へぇ。この子の名前、Aって言うんだね」
「聞こえねぇのか？Aから離れろっ！」
「そんな怖い顔して言わなくたって何もしないよー…」
「キスしようとしてただろっ！」
「ははっ。そうだったねー」
「テメェっ、ナメてんのか？」
「そうそう。ボクへの口のきき方、気を付けてね。あんまりボクの機嫌を損ねる事すると…」
男がフロイドの目を見た。
次の瞬間。
「うっ…」
一瞬でフロイドが人魚の姿になった。
人魚は陸では生きれない。
足を失い尾ビレだけになったフロイドが床に倒れる。
「人魚ってさぁ。水の中じゃないと死んじゃうんでしょ？」
「テメェ…、何しやがったっ…」
「本来の姿に戻しただけだよ。苦しくなってきた？シャワー、もう一回浴びてくればぁ？あ、足がないから移動するのも一苦労になっちゃったねー」
苦しそうに両手を床について睨んでくるフロイドに、男は笑った。
「殺すぞっ…」
「ははっ。そんなに弱っててボクを殺せるの？それに、ボクを殺すのはやめた方が良いよ。ボクがいなくなったら、この子も元の世界に戻る事になるからねー」
「やっぱり…テメェが…」
「何を調べたか知らないけど、ボクにしか、この子をこの世界に留めさせられる毒をキミにあげることは出来ないんだよ？」
「クソッ…」
「えーっ？もっと喜んでよー。キミとボクってぇ、仲良くなれそうじゃん！」
「誰がテメェとなんて仲良くなるかよっ！」
「ほらほらぁ。そんな事言ってると、毒、あげないよー？」
フロイドは手をつく力もなくなってきた。
「ぐっ…」
そのままフロイドが床に倒れ込む。
「変身薬に頼って陸で生活するのって、大変そうだねー。どう？ボクが凄いって、少しは分かってくれた？」
「オレに…何が…したいんだよっ…」
「ボクはただ、キミを気に入っただけ。こんなにボクに突っかかってくるヤツって初めてで新鮮なんだよねー。それに、威勢の良いヤツって、嫌いじゃないし」
男はフロイドの前に来てしゃがみ込む。
そしてフロイド髪を鷲掴みして顔をあげさせた。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年4月23日 16時
