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フロイドの毒 〜6〜  ページ12

「薬、飲ませてあげるから、口、開けて」

フロイドに言われた通りにAは小さく口を開ける。
その中にフロイドが薬を入れる。

「こぼさないようにね…」

Aがグラスを持ってスポーツドリンクを飲む。

「うん。上手に飲めたね…」

Aの目はトロンとして、焦点が定まっていない。

フロイドがグラスを近くの机に置くのに少し身体をひねった。

トン…

「小エビちゃん…」

座った状態のまま、Aがフロイドに寄り掛かってきた。

「頭…痛い…」

「うん。きっと薬効いてくるから…。また横になって、ゆっくり寝よ」

フロイドがAを寝かせる。

「私…消えちゃう…?」

「ううん。消えない」

「本当に…?」

「うん。本当」

「消えちゃうの…嫌…」

「大丈夫。オレがいるから…」

「抱っこ…して…」

「うん」

熱いAをフロイドは優しく抱きしめる。

「消えたく…ない」

「うん。消えないから大丈夫…」

「頭…痛いの…」

「そうだよね…。痛いね…」

「嫌…だな…。消えたく…ないよ…」

「うん。消えないよ…」

Aがうなされているように感じたフロイドは、Aを落ち着かせるように優しく言葉をかける。

「抱っこ…して…」

「うん。してるよ…」

「…そっか…」

Aがゆっくり深呼吸した。

「いい…匂い…」

「うん。小エビちゃんも、いい匂いだよ…」

「…そっか…」

安心したような返事だった。

間もなくAの寝息が聞こえてきた。




少しして、フロイドはAからゆっくりと離れた。

「大丈夫…。オレが小エビちゃんを消させないよ。大丈夫。大丈夫だから…」

フロイドもどうしたら良いのか分からない。
自分に言い聞かせるように大丈夫という言葉を繰り返す。

「はぁ…」

フロイドは部屋を出た。
Aが眠っている間に、先程ジェイドが持って来てくれたサンドイッチをキッチンでさっさと食べた。



再びフロイドがAの部屋に戻ろうとした時、スマホが鳴った。
アズールだ。

フロイドが応答する。

「フロイド。先程ジェイドから話は聞きました」

「あー、うん。今小エビちゃん寝てるよ」

「そうですか。それならちょうどいい。お前に見せたい物がある。これからそちらに向かいます」

「オレに見せたい物…?」

「かなり重要な手掛かりになるかと…」

「マジで…?分かった。待ってる」

アズールがそう言うなら本当に重要な手掛かりになるだろう。
普段のアズールを見ていれば自然と分かることだった。

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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年4月23日 16時

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