ウツボが好き過ぎる 〜7〜 ページ7
「そうなんですか…。私は何も分からないので…。そう言うものなんですかね…」
「うん。あのさ。さっきから、何してんの？」
「えっ？…あの…、ソファーの位置をもう少し窓側に移動したいんですけど、重くて動かないんです…」
するとフロイドがソファーを簡単に窓側に押して移動させた。
「凄い…。…ありがとうございます。フロイド先輩って、力持ちなんですね」
「はあ？こんなの余裕だろ？小エビちゃんが力無さ過ぎなの。本当にちっちぇ〜な…。オレの胸くらいしか背ないじゃん」
フロイドがAの目の前に立ち、向かい合わせに背比べをした。
〜近いっ！近すぎるっ！〜
フロイドとの近距離にAの鼓動がまた速くなった。
「どーしたの？小エビちゃん？」
黙ってうつむくAにフロイドが顔を覗き込んできた。
また目が合う。
そして目が離せなくなるほどフロイドの瞳に吸い込まれていく。
「あっ………」
「ん？」
「いえ…」
「……小エビちゃんさ。いい匂いするねー。オレ、この匂い、知ってる…」
フロイドがAの首辺りに鼻を近付けてきた。
「……海の匂い」
「海の…匂い…ですか…。磯臭い…？」
「違うよ。そんなんじゃない…」
フロイドがしばらくAの首辺りから顔を離そうとしない。
Aも緊張して動けない。
Aの耳元でフロイドの呼吸が聞こえる。
「ふーん。海の匂いねぇ…」
フロイドが囁く。
「小エビちゃんがこの世界に来たのって、もしかして、オレに会いに来たんじゃない？」
「えっ…？」
「だって、ウツボ、大好きなんでしょ？」
「……そうですけど…」
フロイドが顔を上げた。
「ま、理由なんて、どーでも良いけどね」
そう言ってAの頭を優しく触った。
「小エビちゃんの髪、サラサラ…。真っ黒」
「はい…。フロイド先輩の髪の色…、凄く綺麗ですね」
「うん。オレ、人魚になると全身がこんな感じの色になるよ」
「そうなんですかっ？」
「見たい？」
「はいっ！」
「ダメ〜っ」
フロイドがニッと笑う。
「見たい？って聞いてきたの、フロイド先輩じゃないですかっ！」
「でもダメ〜っ。めんどくせぇから」
「そうですか…」
フロイドがソファーに置いてあるウツボの抱き枕を手に取った。
「これ、毎晩抱っこして寝てんの？」
急に話題を変えられてしまった。
「はい…。枕元にも、たくさんウツボのぬいぐるみがあったんですけど…」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年4月19日 9時
