フロイドの決心 〜1〜 ページ12
フロイドの部屋になる予定の室内が、魔法でピカピカになった。
「小エビちゃんの部屋も、やって欲しい？」
「やってもらえるなら…、お願いしたいですけど…」
「いーよ。ついでだからぁ」
フロイドは向いのAの部屋にも清掃魔法をかけた。
「ありがとうございます！凄いですね、魔法って…」
「オレたちはそこそこ魔法使える方だからこんなこと出来るんだよ。フツーのヤツならこんな魔法使うの無理だよ」
「なんか、カッコイイですね…」
「うん。知ってる」
そう言うと、フロイドは階段の手すりを飛び越えて、踊り場の下の階段に飛び降りた。
「えっ！」
「オレさ。パルクール得意なの。だからぁ、こういう手すりとか階段見ると、飛び越えたくなるんだよねぇ」
「めちゃくちゃ…カッコイイ…。しかも…ウツボ…」
「あ？何か言った？」
「い、いえ…っ。何も…」
「ふーん。オレ今から小エビちゃんの服、適当に持ってくるよ。まだ掃除する場所あるでしょ？」
「はい。ありがとうございます。じゃぁ、私は掃除の続き、してますね」
「よろしく〜」
階段の途中からAを見上げていたフロイドも、寮を出て行った。
「うふふ…。ウツボの人魚と仲良くなれた…かも…」
夜も一人じゃなくなった。
大好きなウツボと仲良くなれそう。
Aはホームシックとは無縁のようだった。
Aとフロイドの部屋は綺麗になった。
談話室も自力で綺麗にした。
「後は…キッチンと、シャワールームかな…」
Aはキッチンに入り、掃除を始める。
「うわぁ。調理道具いっぱいあるなぁ。オーブンもあるし、コンロなんて何個あるんだろう…」
床を掃き、モップで磨き、作業台を拭いていく。
大きなキッチンはなかなか手強い。
「ふぅ…」
だいぶ時間が経った気がする。
ガタンッ…
玄関の方で音がした。
「フロイド先輩？」
Aがキッチンから出て玄関の方を見た。
「えっ？誰…？」
玄関を入った所に二人の男子生徒が立っていた。
「へぇ。お前が異世界から来たって言う女子生徒？結構カワイイ顔してんじゃん」
「ったくよぉ。ジェイドだけヌケヌケとここに出入りしやがって。俺たちだって同じ寮生だっつーのになぁ…」
知らない顔だ。
知っているのはフロイドとジェイドとアズールだけだが。
「あの、何の用ですか？」
「新入生を歓迎しにきたの。俺たちお前の先輩だからぁ」
男子生徒たちがニヤニヤと近づいて来る。
それに合わせてAは後ろに下がる。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年4月19日 9時
