パパとママになる 〜1〜 ページ1
Aが分娩室に行ってから数時間が経った。
早朝４時過ぎ。
外はまだ雨が降っていた。
「リーチさん。次の陣痛が最後です。次で赤ちゃん出てきますよっ！今までで一番のいきみをしてくださいね」
医師がAに明るく声をかけた。
Aはうなずくだけだった。
「A！最後、頑張ろうねっ」
「うんっ…」
ジェイドはAの頬を触り、頭を撫でた。
Aは息も絶え絶えで、酸素マスクをつけられてしまった。
そして。
Aに陣痛が来た。
「リーチさんっ！頑張ってっ！もっといきんでっ！」
Aは声も出さずひたすらいきむ。
顔がどんどん赤くなる。
「Aっ！頑張れっ！」
「もう出てくるよーっ……」
医師が赤ちゃんを引き出した。
ついに。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
Aの呼吸が酷く荒い。
それでもAはしっかりと医師が取り上げた赤ちゃんを見ていた。
「産まれたよ！リーチさんっ！元気な女の子！」
医師が赤ちゃんを助産師に渡し、そのままタオルでくるむ。
赤ちゃんは間もなく産声をあげた。
助産師はすぐにAのお腹に赤ちゃんを乗せた。
「おめでとうございます、リーチさん！良く、頑張ったわね！お父さんにそっくりね〜っ」
助産師がAのお腹の上で赤ちゃんを支えたまま、Aは元気に泣いている赤ちゃんをそっと触った。
「…私の…赤ちゃんだ…」
「A…」
Aは静かに涙を流した。
「この子が、さっきまであなたのお腹にいたのよ。そして、今、やっとお父さんとお母さんに会いに来てくれたの！」
助産師がAに語りかける。
Aは頷き赤ちゃんを両手で持つ。
助産師が手伝って胸の上に持ってきてくれた。
「ジェイド君…。見てる？…私、ジェイド君と私の赤ちゃん…、産んだんだよ…」
「ええ…。A…、本当に、良く頑張りましたねっ…」
ジェイドはAの頭を撫でながら赤ちゃんに触れた。
「僕たちの娘…」
「うん…。初めまして。サクラ…。パパと、ママだよ…」
ジェイドは胸が熱くなり、鼻がツンと痛くなった。
そのまま涙が溢れた。
「サクラ…。産まれてきてくれて、ありがとう…」
ジェイドは赤ちゃんに微笑んだ。
Aの処置が全て終わり、Aは陣痛室のベッドでしばらく休んでいた。
「まだ信じられない…」
「僕もです…」
ベッドに寝ているAの手を、ジェイドが握る。
「本当に、パパとママに…なったんだよね…？」
「ええ…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：魅樹 | 作成日時：2023年4月9日 22時
