暴走、再び 〜7〜 ページ38
「そんなことさせられませんよ。Aには、きちんと卒業してもらいます」
「なら、信じてやれよ」
フロイドが真顔でジェイドに言い放つ。
「ジェイド君…」
Aがジェイドの胸の中から見上げる。
「…とても…難しい判断です…」
「小エビちゃんはどうしたいの？このまま、ジェイドに縛り付けられて、ジェイドの言う事聞かなかったら、絞められる生活続けたいの？」
「私は…。束縛は…好きじゃありません…。でも、ジェイド君を心配させることも…したくない…」
『キュンッキュンッキュンッキュンッ！』
くーちゃんがジェイドの肩に乗ってきた。
そして必死に何かを伝えようとしている。
「A。くーちゃんは何て？」
「私が学園でまた同じ事をしたら、すぐにジェイド君を呼びに来るって。くーちゃんが瞬間移動でジェイド君を学園に連れて行くって…」
ジェイドはくーちゃんを手のひらの上に乗せた。
「くーちゃん…」
「ジェイドよりくーちゃんの方がよっぽど分かってんじゃん」
『キュンッキュンッ！』
くーちゃんが今度はフロイドの頭に乗った。
「フロイド遊ぼうって言ってます…」
「おっけー！じゃあさ、庭で思いっきり空に向かって投げ飛ばしてやるよ」
そう言ってフロイドは雑にくーちゃんを握った。
ビュンッ…
「フロイド先輩っ……」
「なぁに？」
フロイドは、目の前に瞬間移動してきたAをくーちゃんを握ったまままた見下ろした。
「今度はナイフで、オレの事、刺しに来たの？」
「私がナイフを持っているように見えるか？この節穴がっ」
「小エビちゃん、言ってくれんじゃん…」
「フロイドっ！Aっ！」
フロイドとAがやり合ってしまいそうな空気だ。
「くーちゃんに…怪我をさせるような遊びは控えろ…」
「怪我させちゃうかもっ…」
「……お前を…、信じてやる…」
「ふーん」
手には何も持っていないAが、フロイドから少し目線を反らせて呟いた。
「だってさぁ。ジェイドー」
「A…」
「くーちゃん。フロイド先輩と…庭で楽しく…遊んでもらえ…」
『キュンッキュンッ！』
くーちゃんはAの頬に体を擦り付けに来た。
そしてすぐにフロイドの頭の上に乗った。
「フロイド先輩。その前に、お前の飴玉を…返す…」
「今はいらねー。小エビちゃんそのまま持ってて。魔法使えない生活って、どんなもんかやってみたかったんだよねぇ」
そう言うと、フロイドはくーちゃんを握ったまま庭に出て行った。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年3月23日 21時
