決闘 〜6〜 ページ17
Aはオスカーの耳元で囁く。
「……私は寮長だ。多少の魔法は皆に見られる。今だって、反復魔法が使えることを公表したようなものだ。だが、それも問題ない。なぜなら、私はお前とは桁違いの魔力を持っている。私に勝てる生徒なんて、いないんだよ…」
「……うっ…」
オスカーが地面に膝をつく。
「もう限界か？大した事ない奴だ…」
「…な…なぜ…寮長は…この中にいるのに…なんともないんだ…」
「防御魔法が得意だと言っただろう？自分の魔力を吸い取られない様にする魔法など、いくらでもあるだろう？」
「僕は…知らないっ…」
「そんな無知な状態で、良く私に決闘なんて申し込んだな。その勇気だけは、褒めてやる」
「………」
「魔力が他の生徒より少し強いからと言って、調子に乗るな。私から見れば、お前も他の生徒も大差は無い」
『キュンッ…』
Aの胸の中のタコが小さく鳴いた。
〜オスカー。タコ使い荒くて怖くて嫌い。だけど、もう、いじめないで…〜
「オスカー。小さなタコ、あまりいじめるな。怖がっているぞ。お前が作った魔獣だろ。大事にしろ。弱って行くお前を心配している」
「ふっ。そんな使えない魔獣、消してしまえば良い…」
「そうか…」
Aは胸の中からタコを出す。
「お前は用済みだそうだ。可愛そうだな…」
『キュ〜ン……』
小さなタコはまた涙を浮かべる。
〜何でもしますっ！だから、消さないでっ！消えるの、怖い！〜
「消えたくないと言っているぞ。魔獣のくせに、弱虫だな…」
小さなタコはAの手の中で少しずつ透明になっていく。
オスカーの魔力が尽きかけている。
「お前は僕の魔力が尽きれば…、自然と消える。諦めろ…」
『キュンッキュンッ…』
タコは必死に首を左右に振る。
その姿を見て、Aが悲しい顔をする。
「……私の魔獣になるか？私なら、お前を助けてやれる」
「寮長…。魔獣に情けをかけるなんて…」
「オスカー。言っただろう？魔獣を大事にしろと。錬金術で作った物とは言え、コイツには意思がある。こんなに小さくても、お前が命を吹き込んだんだ。人も魔獣も、大きいも小さいも…、皆、平等の命だ」
「ふっ。他の魔獣は消しておきながら…、良くそんなことが言えますね」
「そうだな。…ただ、コイツは…、生きようと必死になっている。そこが他の魔獣と違うところなのかもしれない」
タコの姿がどんどん薄くなっていく。
『キュ〜ンッ……。キュ〜ンッ……』
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年3月23日 21時
