決闘 〜1〜 ページ12
Aは嬉しそうに言った。
「どうぞっ」
「失礼します」
アズールが部屋に入ってきた。
「お久しぶりですね、Aさん」
「アズール先輩っ！」
嬉しすぎてAはアズールに抱きついてしまった。
「ちょっ、ちょっとAさんっ…」
そう言いながらもアズールはAを受け止めてくれた。
「凄く…、凄く嬉しいです…。ありがとう、アズール先輩…」
「僕はたまたまここのモストロ・ラウンジに用があって来ただけですよ。それが偶然にも、Aさんの決闘の日と重なっただけです」
「それでも嬉しいです…」
「そうですか…。大して相手の情報も掴めず、申し訳ありませんでした。なかなか、ガードの硬い奴のようで…」
「……そうですね…」
「そんな奴が我が寮の寮長になろうなんて、図々しいにも程がありますよ」
「はい…」
Aはまだアズールから離れない。
「Aさん。今日は追加の情報を持ってきました」
アズールもそのまま話しを続ける。
ジェイドの代わりを務めているようだ。
「追加の情報？」
「ええ。オスカーは、瞬間移動も使えます」
「えっ…」
「かなり厄介ですよ。Aさんも回避する時には瞬間移動を使うべきですが、彼も同じ様に瞬間移動を使ってあなたの攻撃を回避するという事です」
「………」
「それと、彼の相手を操る魔法の正体も掴みました」
「やっぱり、目を見る魔法とは違ったんですね…」
「ええ。錬金術が得意なオスカーは、使い魔を錬金するようです」
「使い魔って…。魔獣を服従させたり、契約して使うんじゃ…」
「彼は特殊です。自分で錬金した魔獣を使って相手を操るそうですよ」
「意味が…わかりません…」
「実際に見たわけではないので予測でしかありませんが、魔獣に相手を襲わせ、身体を乗っ取る…。そんなところではないでしょうか」
「そんな魔法、私には使えませんよ…。私より、遥かに魔法使える人に思えますけど…」
「いいえ。Aさんの方が魔力は上です。Aさんは普段から守りに徹し過ぎなんですよ。ジェイドもそれを黙認しているだけです。本気を出せば、オスカー以上の攻撃魔法を展開出来るはずです。この決闘で暴走したって良いではないですか。この寮を守りたいなら、そのくらいの気持ちを持ちなさいっ。守りだけでは守れない事もあるという事に、あなたも気付いているのでしょう？」
「…たぶん…」
「その後の事なんて、全部ジェイドに任せておけば良いのですよ」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年3月23日 21時
