珊瑚の海での一週間 フォード家編 〜8〜 ページ8
程なくしてお母さんが慌てて客間に戻って来た。
「ジェイドさんっ！Aがいないわっ」
「Aが？」
「キッチンにも、他の部屋にもいないのよ…」
「なぜ…」
ジェイドがハッとした。
それとほぼ同時に客間のあらゆる物が一斉に揺れ出した。
パリーンッ…
お茶の入ったグラスが全て割れた。
壁掛け時計も床に落ちて割れる。
客間の装飾品がことごとく破壊されていく。
「Aっ！」
「なっ、何なのっ？」
お母さんが驚いて動揺した。
「お母様っ！Aは恐らくお父様の部屋ではないでしょうかっ」
「えっ…」
「部屋の場所を教えてくださいっ！」
「あ、あのっ…」
「早くっ！Aが危ないっ！」
ジェイドが客間を勢い良く飛び出す。
お母さんから教えてもらったお父さんの部屋へ急いで泳いで行く。
「Aっ！」
部屋のドアの前でジェイドが大声でAを呼んだ。
「ジェ…イド…っく…んっ！」
微かにAの声が聞こえた。
しかも苦しそうだ。
ジェイドがドアを開けようとした。
「くっ、鍵なんてかけてっ…。Aっ！」
ジェイドは一度後に下がり、勢いをつけてドアに体当たりする。
「ぐっ…！」
ドアに跳ね返させる。
もう一度、今度は更に勢いをつけて体当たりした。
ドガッ…
ドアにヒビが入った。
「クソッ！」
ジェイドが三度目の勢いをつける。
ドアに体当たりする直前に狙いを定めてドアのヒビ割れた所に攻撃魔法を展開した。
バキバキバキッ……
攻撃魔法が功を奏し、ジェイドはドアを突き破る事が出来た。
身体に擦り傷がたくさん出来た。
しかしそんな事気にする暇もない。
「Aっ！」
Aがお父さんの足で身体を巻き付けられた挙げ句、首を絞められていた。
ジェイドは一目散にお父さんの身体に長い胴体を巻き付けた。
そしてAの首に巻き付けられたお父さんの足を両手で引き剥がそうとした。
「Aを離せっ！」
「誰に言っているのだ？」
お父さんは残りの足でジェイドの胴体を器用に緩めていく。
ジェイドが力を入れてもそれを凌駕する力で抵抗された。
「邪魔するなっ。これはフォード家の問題だ。部外者は引っ込んでいなさいっ」
吸い付く様にジェイドの胴体にお父さんの足が巻き付いてくる。
物凄い力だ。
「実の娘に何をしているのか分かっているのかっ！」
胴体にお父さんの足が巻き付いてもジェイドは必死にAの首から足を引き剥がそうと頑張る。
「ジェ…イ…ド……く…」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年3月4日 9時
