新寮長、着任 〜3〜 ページ47
「着任式で何か騒がれたら、多少の強めな魔法を使っても良いですから。毅然とした態度で押し通しなさい。これは、僕の副寮長として最後の命令です。分かりましたか？」
「最後の命令…。はい…、副寮長…」
「ふふふ。寮長服を着ているAに副寮長命令を出すのも、おかしいですけどね…」
「いえ…。まだ…着任前ですから…」
トントントン…
部屋のドアがノックされた。
「はいっ」
Aが答える。
「A。寮生、全員集まったぞ」
セナだった。
「分かりました。今行きますっ」
Aが不安げにジェイドを見上げる。
「着任式中、僕はずっとAの側にいますから。安心してください」
ジェイドはAにキスをした。
「お守り、のキスです」
「ありがとう…。…よしっ！行くぞっ！」
Aは気合を入れて細長い廊下に向かって歩き出した。
「Aっ！」
ジェイドが後ろから呼び止めた。
「これ、忘れてどうするんですか…」
ジェイドの手には寮長杖があった。
「……すっ、すみませんっ！」
Aは慌ててジェイドの元へ走って寮長杖を受け取った。
「おしおきです」
「はい…」
談話室に着くと、既に全寮生が集まっていた。
Aに気付いた寮生たちがAをジロジロと見てくる。
「…うっ…」
「ナメられたら終わりですよ」
たじろぐAにさり気なくジェイドが囁いた。
〜そうだっ…。毅然とした態度っ！〜
Aは深呼吸をして、胸を張って寮生たちの前に歩いて行く。
そこには既にアズールが待っていた。
「おや、新寮長。とても良くお似合いだ」
「…あ…ありがとう…ございます…」
「もっと堂々となさいっ！」
ここでもアズールにさり気なく囁かれた。
「はい…」
何となくチラッと後ろを見た。
ちゃんとジェイドが後ろを付いてきてくれていた。
その後ろにはセナもいる。
当たり前だ。
セナも新副寮長なのだ。
「皆さん。お静かに…」
アズールが慣れた様子で寮生たちを黙らせる。
一瞬で静かになる。
「只今から、新寮長、副寮長の着任式を行います。進行は前寮長の僕が務めます」
寮生たちの視線が痛い。
明らかに納得の行かない表情の寮生が多い。
「前寮長の僕からは、特にあなた達に送る言葉はありません。強いていうのならば…。新寮長の言う事を良く聞くように…、ですかね」
失笑が広がる。
アズールはなぜそんな事言ったのだろう…。
Aは不安になった。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年3月4日 9時
