珊瑚の海での一週間 リーチ家編 〜8〜 ページ22
「いやぁ、私がまだ１年生だった時の話でね。あの時は、ちょっと生意気な寮長がいたもんで。友人たちと調子に乗って、今で言うノリで私が寮長に決闘を申し込んだんだよ。そしたらなんと、あっという間に決着がついてしまってねぇ。それ以来、私が寮長を務めたんですよ」
「凄い…ですね…」
「Aさんに比べたら大したことないよ、ハッハッハッ！Aさん、寮生が言う事を聞かない時は、ちょっとだけ魔力強めな魔法を見せてやるといい。ジェイドの言う通り、皆、大人しくなるから」
パパが可愛くウィンクした。
「分かりましたっ！アドバイス、ありがとうございますっ！」
「ナイトレイブンカレッジで女の子の生徒が初めてなのに、更に寮長まで出来るなんて、これからのナイトレイブンカレッジも時代と共に変わって行くかもね〜」
ママが微笑んだ。
「Aちゃんの寮長服姿、見てみたいわ〜！」
「写真なら、Aが寮長に着任した時に送りますよ」
「ジェイド君っ！私、恥ずかしいですよっ…」
「あら、ジェイドだけAちゃんの寮長服姿見れるのはズルいわ〜！Aちゃん、ママにも見せてちょうだい！」
「パパもぜひ見てみたいなぁ！ハッハッハッ！」
「またフォトフレームに入れてプレゼントしますね」
勝手に決められてしまった。
「…………」
突然Aが食べるのをやめて黙り込んだ。
「A？どうしました？」
「………ちょっと待って…」
ジェイドに短く言ってAが目を閉じた。
眉間にシワを寄せてしばらく黙っている。
その姿を三人は見守った。
「ジェイド君、また…声が…」
目を閉じたままAが言った。
「声？」
ママとパパが顔を見合わせる。
「マリア…。早く…。我に…残された時間は……もう…無い……」
Aが呟き、パッと目を開けた。
「ジェイド君っ！石が、時間が無いって言ってる！」
「どういう意味です…？」
ジェイドが顔をしかめる。
「やっぱり珊瑚の海に来たら声がまた聞こえてきた！ジェイド君っ。私、石に会いたい！」
「Aちゃん。石って、願いを叶える石のこと？」
「はい。たぶんこの声はそうです。マリアが聞こえた石の声…」
「場所は？」
ジェイドが聞く。
「声の強さからして、そこまで遠くは無いと思う…。また…何か言ってる…」
Aがまた目を閉じた。
「月の光に……輝くサンゴの群生……。…とても静か……。色とりどりのサンゴの群生……。場所を教えてくれてるっ！」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年3月4日 9時
