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「よーし、揃った」
スーパーから出て変装用の眼鏡とマスク、そして帽子を着用。
傍から見たら結構危ない人だろな、なんて苦笑い。
大貴が帰ってくるまでもう時間ないしケーキは今度でいっか、と結局作るのはホットケーキ。
ついでに丁度無くなった卵と飾り付けのホイップクリームと苺も買って。
…なんだろ、なんか俺浮かれてる気がする。
そういやどれがいいかな、綺麗かななんて考えながら苺選んでたような気が。
……確実に浮かれてるな。
いやだってしょうがない、大貴と付き合い始めて1年なんだ、そりゃ浮かれるに決まってるもんね！うん！
「やっべ、早く作らないと大貴帰ってくる」
時刻を確認すると帰ってくる30分前。
急いで帰らないと……。
「……って、あれ？」
スーパーを出て数分。
家の近くにある商店街に彼らしき後ろ姿。
いや、間違いない大貴だ。
帰るって言った時間よりだいぶ早く帰ってくるんだな。
そう思いながら話しかけに行こうかなと彼がいる方向に足を向ける。
__その瞬間、大貴の隣にいる〈女の人〉の存在に気づいた。
_______誰、あの女の人。
心臓の音がうるさい。
嘘、だよね。
待って、分かんない、どういう事。
隣の女の人が大貴に微笑みかけるのが見える。
大貴もその人に幸せそうに微笑んだ。
そんな顔、やめてよ、俺以外にしないで。
「…………やめて、」
やっと声は出たけど大貴まで届かない、小さくか細い震えた声。
買い物袋がガサッと腕から落ちた。
その途端この場から逃げるように家に向かって走り出す。
幻聴か本当か。
後ろから涼介、と俺を呼び止める声が聞こえた気がするけど無視して走った。
家に着き、すぐスーツケースを取り出して服とか諸々をそれの中へ纏めて入れる。
メモ帳から乱暴に紙をちぎって彼に手紙を書く。
「っ……本気だったのは俺だけっ……？」
誤解かもしれないなんて思わなかった。
あんなに幸せそうな顔してたのに、誤解でしたなんていうオチは絶対ない。
なんの根拠もないのにそう確信した。
___あの後家を飛び出して前まで暮らしていた家にまた戻ってきた。
「…なぁ涼介、」
「何大ちゃん？」
そして彼の呼び方を戻した。
彼を呼ぶ度悲しそうにする顔の意味はもう俺には知る由もない事、なんだ。
_*_*_*
知る由もない事 クルキ
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作者名：クルキ＆おまめ。 x他1人 | 作者ホームページ：あっとまーくじゃんぷ。
作成日時：2019年5月13日 22時
