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「…本当に、大好きで、大切な人に…そんな…どっちか諦めさせるようなことはしたくない…。Aちゃんが、どれだけの覚悟を持ってこの世界に入って、どれだけの努力を重ねて今の地位を築いて…どれだけの愛情を持って、俺ら後輩のために動いてくれてるか…近くで見てきて、分かってるつもりだから…だから…宝物も、仕事もどっちも掴める道を、俺は一緒に探したいって思う。」

ぽつり、ぽつりと。
陸ちゃんの、少し高い声がスッと心に入っていく。

ちらり、と陸ちゃんを見上げると、優しく微笑む陸ちゃんと目が合って、視界が涙で滲んでいく。

耐えきれなくて、息を零しながら、目を閉じれば、ポロポロと涙がこぼれ落ちていく。

『…周りの人にもっ…仕事は、しばらく休めって…っ…まだ、そんな時期じゃないのにっ…迷惑かけてっ…頑張れない自分が嫌で…っ…』
「…うん。」
『…無理して…また…倒れたり…そうなって…宝物を壊してしまうとか…大切な…その…人たちを悲しませたりするのは…絶対に嫌なのに…でも…仕事は手放したくない…っ』

泣きながら、そう話した私を、陸ちゃんは遠慮がちにそっと頭を引き寄せて、優しく撫でてくれる。

「…多分ね、Aちゃんに休んだ方がいいって言う人たちは、Aちゃんのことが大切で大切で仕方なくて…Aちゃんが傷付いたり、悲しんだり…そんな姿は見たくないって思ってるんじゃないかな…。」

涙で濡れた頬を拭おうと、両手で顔を覆えば、陸ちゃんの綺麗な大きな手が、その手を掴む。

「…俺もその1人。」

顔を覗き込むようにして、陸ちゃんはそう言いながら、優しく、優しく微笑む。

「…それから…ケンチさんは…絶対にAちゃんを失いたくないから…だから…全てを捨てさせても、Aちゃんだけは…絶対に隣で、生きていて欲しいって…そう思って…Aちゃんにとっては辛い決断を迫るようなことになってるのかもしれないね。」

そう言って、陸ちゃんは、私の頬に手を這わせる。

びっくりして、目の前の彼を見つめれば。

「…愛されてる…ケンチさんにも、みんなにも。この場所も…俺が、守るから…安心して、しんどい時は休む。いけそうな時はここで働く。それでいいんじゃない?」

ニッコリ笑った陸ちゃんは、こんなにも逞しくなったのか、と。

「…Aちゃんが、必要だから…」

ぎゅっと、抱きしめられながら、そう感じていた。

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ユキ(プロフ) - 久しぶりの更新ありがとうございます(*^^*) (2021年9月30日 21時) (レス) id: e86d7cf610 (このIDを非表示/違反報告)
rhszh(プロフ) - 更新ありがとうございます!早速読みました!最高です!お誕生日おめでとうケンチさん! (2021年9月30日 0時) (レス) id: e78e4a67b5 (このIDを非表示/違反報告)
きき(プロフ) - にゃんちゅうさんの小説大好きで何回も読んでいます!赤ちゃんも産まれてこれからどうなっていくのか続きが楽しみです! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 1cb6a41e93 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - キャー(/▽\)♪ (2020年9月30日 7時) (レス) id: 5f63e3cc55 (このIDを非表示/違反報告)
きくりん(プロフ) - あらあらケンチさん鋭いですね。啓司さんとケンチさんの中が悪くなりませんように (2020年9月7日 0時) (レス) id: 97f67c1a4a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2018年12月16日 0時

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