幸せな時間 ページ14
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だいぶ大きくなってきたお腹をさすりながら、事務所へと歩く。
12月に入り、師走の名の通り、ケンチさんはバタバタと日本中、いやアジア中を飛び回る日々だった。
私自身も体調は落ち着いていて、産休前の最後のひと頑張りとばかりにさまざまな仕事を、自分のペースながらも、忙しくさせてもらっていた。
いつもケンチさんにはタクシーを使えと怒られるけれど、運動がてら歩きたいと言い張り、今日もゆっくりゆっくりと事務所へと向かう。
「Aちゃん…?」
『…陸ちゃん!』
「え?1人?!え?!歩き?!そんな大っきなお腹で?!大丈夫なの?!え?!」
声をかけられて振り返るなり、アワアワと言葉を発する陸ちゃん。
その姿を見ているだけで笑いが止まらなくなる。
あの日、優しく微笑んで、私の頬に触れた大きな手を。
あの日、私を抱きしめてくれた大きな身体を思い出して、少しだけ照れ臭くなったけれど、それも一瞬で。
いつもと変わらない姿に、安心する。
『大丈夫だから(笑)陸ちゃんも事務所?急いでなければ、一緒に行こう?』
「もちろん!しっかりお供させていただきます!!!」
敬礼しながらそう言う陸ちゃんと、ゆっくり歩き出す。
「そういえばね、俺、今度のツアーでピアノ弾くんだよ。」
『あ、アリーナツアー?』
「そうそう!必死に練習中。」
『えー、陸ちゃん元々ピアノ弾けたじゃん。』
「ツアーの中の1つのパートとして、お客さんに見せるとなるとまた別でしょ…」
『ふふ、緊張するよね?』
「Aちゃん、時間あったら今度チェックしてくださいよー!」
『え、せっかくだから今日見ようか?』
「え?!いいんですか?!」
お互いの用事や仕事を済ませた後、私の秘密基地で合流しようと約束を取り付けて、一旦別れると。
KC「なーに?堂々と浮気?」
『うーん…ワンコのお散歩かな?』
KC「ふは(笑)Aさん、言うねえ(笑)」
ふわりと、後ろから抱きしめられて、耳元で囁かれる。
KC「また歩いてきたの?」
『うん。あ、これ食べる?寄り道したお店でオマケもらっちゃって。』
KC「食べる、食べる。」
後ろを見上げながら話し続けていれば。
TE「いや、ここ事務所だからね?!イチャイチャは別でお願いできますか?!」
KC「まぁ、そう僻むなって。」
TE「本当ムカつくんですけど!!!」
束の間の一緒に笑い合える時間が、本当に幸せだなぁ…と思える毎日です。
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ユキ(プロフ) - 久しぶりの更新ありがとうございます(*^^*) (2021年9月30日 21時) (レス) id: e86d7cf610 (このIDを非表示/違反報告)
rhszh(プロフ) - 更新ありがとうございます!早速読みました!最高です!お誕生日おめでとうケンチさん! (2021年9月30日 0時) (レス) id: e78e4a67b5 (このIDを非表示/違反報告)
きき(プロフ) - にゃんちゅうさんの小説大好きで何回も読んでいます!赤ちゃんも産まれてこれからどうなっていくのか続きが楽しみです! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 1cb6a41e93 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - キャー(/▽\)♪ (2020年9月30日 7時) (レス) id: 5f63e3cc55 (このIDを非表示/違反報告)
きくりん(プロフ) - あらあらケンチさん鋭いですね。啓司さんとケンチさんの中が悪くなりませんように (2020年9月7日 0時) (レス) id: 97f67c1a4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2018年12月16日 0時